「照明」とは、愛につながるもの。

イルミネーションの華やかなきらめきは心浮き立たせてくれます。

そして、あこがれるのは、キャンドルの光を囲んで過ごすあったかい時間…☆ 
もちろんどちらも大好きな人と!…ならサイコー! 
クリスマスの計画にそっとねじこみたいシチュエーションですよね♪

そもそも、このロマンチックな演出家「光」たちにはどんな効果が? 

数々の照明デザインを手がける「光のソムリエ」、ライティングデザイナーの東海林弘靖さんにお話をお伺いしました!

—イルミネーションにはカップルたちが集まりますが、それはやはり…恋心が盛り上がりやすかったりするんでしょうか!? あのキラキラを一緒に見ることでなんらかの作用が・・!(←前のめり気味)

東海林さん:まあまあ、その前に「照明」というものについてお話しましょうか。夜景ってきれいですよね。僕が世界一夜景がきれいだと思う街が、フランスのリヨンっていう街なんです。ニューヨークのマンハッタンとかシンガポール、パリのシャンゼリゼ通りもきれいだったりするんですけど、非常に上品に人の心を打つ、いちばんきれいな夜景の街だと思うんですね。

—わあ…世界一夜景のきれいな街…! 


(リヨン市庁舎前広場 東海林さん撮影)

東海林さん:街中がただ照らされてるとか、イルミネーションが飾られてるってだけじゃなくて、光たちが広い川の水辺に映りこんで、倍増していて、きらきらゆらめいているんです。歩行者専用の橋があるんですけど、そこは比較的暗くてですね、そこから見るととってもきれいで、一緒に見ている人ともそういう共通の体験ができるしっとりくる空間があったりするんです。

—人々が見て楽しむ場所があった上で、夜景も作られているんですね。

東海林さん:ええ、そういう、街の作り自体と、夜の光の景色がとってもしっくりとマッチした街。そして、光というのはやっぱり、誰と、どういう状況で見るかによってだいぶ心への伝わり方が違うもので、リヨンっていう街は、そのへんも含めて都市の空間自体がうまーくできているというところがあるのです。

—というと…?

東海林さん:たとえば、夕飯をどこか街のレストランで食べますね。で、川のほとりの水辺を歩けたりするんですけど、60歳ぐらいの夫婦も、食事のあとに手をつないで散歩したりしているわけです。そういうカップルがいっぱいいるんですね。

—ステキですね~! きっと若い頃からきっと二人はそうやってデートをして…暮らしや人生に、夜景を楽しむことが自然に組み込まれている街なんですね。

東海林さん:それは単なる恋愛だけじゃなくて、そういう夫婦愛とか、家族愛とか、「愛」っていうようなことにすごくつながるんだと思うんですね。光を見ながら共通の体験をする。そして、感動する。そんなところが、照明の力じゃないかなと思うんです。

たとえば、花を誰かと一緒に見たりするのと似てるかもしれないけれど、光のほうがもっと鋭く記憶のほうに残るんじゃないかと思うんです。大切な人と見た夜景…しかもそれがタイミング的に、より際立つ瞬間だったら…たとえば卒業した日だとか、誕生日だとか、そういう日に、印象的な光とともに過ごした時間っていうのは、深く刻まれるなって感じがしますね。照明ってそういう性質のものだと思うんです。

「やさしさ」で作られる夜景。

東海林さん:一方で、最近北京や上海にいくと、ひたすらキラキラしてるんですよ、街中がイルミネーション、光らなければ建物じゃないぐらいの。あれ、まったく感動しないんですね。むしろあれだけ光がありすぎると、無感動になってしまう。そのへんが先ほどのリヨンなどと何が違うのかというと、やっぱりやさしさみたいなやつがあるかどうかだと思うのね。

—やさしさ!

東海林さん:やっぱり、自分勝手にただキラキラしていればいいっていうのより、誰かに感動してもらいたいとか、誰かに見せたいとか、そういう思いで造られた夜景のほうが、圧倒的に感動するんですね。そのやさしさだったりが、光の表現として出てくるのではないかなあと見ています。

—じーん。。作った人のやさしさかぁ…! 日本の夜景はどうなんでしょう?

東海林さん:たとえば東京の丸の内、ミッドタウンなどの新しいビルは、必ず頭にあらかじめ光のティアラとかアクセサリーみたいな光がのっかっていたりするし、それが生かされるようにとても丁寧に設計されていて、やさしさがでてきている気がしますよ。今の季節にあるようなイルミネーションも、メディアなどで紹介されたりトレンドを意識して作られたり、観る人も評判や感動を話し合うのがふつうになってきて、大切な人と行きたい場所を決めたりしますよね。光を楽しみにいく、いいことだと思いますよ。

光のきらめきは、元気をくれる!

—イルミネーションが人の心に与える効果ってどんなものがあるんでしょう?

東海林さん:基本的に光のきらめきの効果っていうのは、ハッピーにさせたり、もっと言えば元気をあたえてくれますよね。

これはニューヨークのマンハッタンで働いてる友達の話なんですが、その人は仕事でハドソン川っていう川を渡ってフェリーで10分ぐらいいった対岸に行ったんですが、そこからは非常にきれいにマンハッタンの夜景がばーっと見えるんですね。すぐ手前は川だから、川自体は光ってないけど、それに夜景が映りこんでいる、と。すると、夜景の真っ只中にいるんじゃない、その距離感によって、夜景が非常に冷静で客観的な景色に見えた、と。

—ちょっと離れたところで輝いていたんですね。

東海林さん:イヤなこともあったけど、自分は昼間、あのきらめきの中で働いていたんだ、と。すると、よし明日またがんばろう!と思えたんだっていうことなんです。光の効果っていうのはそんなところに象徴されていると思うんですね。

—なるほど…! まさに、元気と勇気をくれたのが光、だったんですね。

東海林さん:これからだって楽しいこといっぱいあるよ、そんな感じじゃないでしょうかね。部屋の中の照明だったら「癒される」って感じだけど、外でのイルミネーションは、元気、勇気がわきおこったりする。それが、イルミネーションが支持されている最大の理由じゃないですかね。 照明っていうのは「暗い場所を明るくするもの」より、どっちかっていうと人生を明るくするとか楽しくするもの。そういうふうにとらえると、めげない、敗者復活する、チャンスはあるよ、と背中を押してくれるものじゃないかな、と。ネガティブな状況を打破してポジティブにする、そういう力が光にはあるっていうふうに思いますね。


イルミネーションや照明のもつチカラは、元気をくれる…
それはきっと、作る人たちの気持ちがこもっているからなのかな…☆

イルミネーションは、舞台装置! 主人公はあなた。

―ずばり、イルミネーションを気になる人と観にいけたら…どんな効果がありますか!?

東海林さん:イルミネーションの街の状態っていうのは、我々の舞台装置だから。その中に、登場人物、主人公として登場してるわけですよね、自分の気にいった場所の。舞台装置を選んで、決めて、「私ここに行く」っていう行動を自分のシナリオとして選べるんですから、主役ですよ。発想した瞬間に。

―ああ主役…! ではもう、堂々とまばゆい舞台に上がれということですね!

東海林さん:もちろんです! あ、そのときね、メガネとかアクセサリーとか、なるべくその光を取り入れるためのものを身につけていってほしいね。よりキラキラしてハマりますから。そうそう、瞳の中にもキラキラが映りますからね。少女漫画の子のような…ほら、よくアイドルの写真の中にも目の中にきらっと十字架みたいな光、あるでしょう? あれを入れるために撮影ではライトを用意しますが、イルミネーションにはその効果がある。あなたをより美しく見せるのは間違いないです。

―了解しましたーー!! 目にキラキラが映ってたら・・ドキドキしちゃいそうですね。少女漫画の目もアイドルにもなれちゃう、イルミネーション。ロマンチックになるしかありませんね!

東海林さん:イチコロですね。笑

二人を素直な心にしてくれる、キャンドルの光。

―次はキャンドルのもつ効果について教えてください。何か、恋する二人にいいことはあるんでしょうか…?

東海林さん:キャンドルのもつ最大の特徴は、揺れることだと思うんですね。またたく、揺れる、ゆらぐ。それを見てると、すごく心が解きほぐされるんです。それから、キャンドルを楽しむ空間って基本的には暗いですよね。イルミネーションは賑わいがあるけど、こちらはしっとりと。明るいところでは人間の目は瞳孔が開いて、光がたくさん入ってくるので瞳孔をしぼるんですが、暗いと、もっと情報がほしくて、瞳孔を開けていくんですね。

―確かに、暗いところでは黒目が大きくなりますね!

東海林さん:その瞳孔を開けていく動きの時は、脳の中は、プロテクトするんじゃなくて、よりたくさんの情報を仕入れたい、と五感の感受性が豊かになる。そういう時、炎がゆれる繊細な変化は、心をリラックスさせるという効果があるんじゃないかと考えています。素直になれたりとか。

―素直に…☆ 瞳孔だけじゃなくて、相手に向かって心がオープンになるっていうことですね…!

東海林さん:その通りですね。私の本(※編集部注『デリシャスライティング』。後にご紹介させていただいてます!)の中にも、たくさんのキャンドルを使った「パワーキャンドル」っていう楽しみ方を載せたんですが、ヨーロッパではキャンドルは5本とか10本とかまとめて灯すんです。1、2本だと仏壇のお灯明みたいになってしまうでしょ。

―確かに、キャンドルって1本だけだとかなり暗いかもです…。

東海林さん:いっぱい灯すと、癒し効果のほかに、シャンデリアのような状態に少し近づいていくんですね。5本はまとめて灯してほしいです。何本も立てられるキャンドルホルダーって、意外と安くておもしろいのがいっぱいあるんですよ。  

蛍光灯だけじゃ…彼の心は解きほぐせない?

―蛍光灯の光でデートするのとキャンドルの光でするのでは違いが…?

東海林さん:太陽やキャンドルの光は、フルスペクトルっていって、光の「可視光線」の波長を全部、含んでいいるんです。紫色から連続的に青~緑~黄色~オレンジ~赤というふうになって。プリズムっていうもので分光すると、ばーっと虹色になるんですけど。

―こんな感じですね(下)。


プリズムによる太陽光の分解
出展:The Department of Physics and Astronomy,The University of Iowa

東海林さん:太陽の光っていうのはいろんな色を含んでいて、それが全部一緒くたになってるから白っぽく見えるんですね。太陽の光とキャンドルの光はすべての光を含んでるんです。しかし、蛍光灯の光っていうのは、赤と緑と青しかないんです。途中歯抜けになっていて。そいつを混ぜ合わせて、いろんな色ができるんですが、紫色の光っていうのがもともと存在してないので、どこかウソっぽい光になるんですよ。

―そういえばモデルさんのメイクをする時も、メイクルームでは蛍光灯じゃなくて、太陽の自然光に近い光を要求されました。

東海林さん:その違いが、無意識のうちに私達の脳や健康とかに影響があるんじゃないかといわれています。人間は自然の一部だとすると、やっぱり自然の波長をもった光と暮らしたほうが健康だったり心が安定したりすることにはなると思います。キャンプファイヤーをみんなで囲んで、終わると絆が強まるのも、それの効果かもしれませんね。

―確かに! じゃあ蛍光灯のリビングじゃ落ち着かないかな…。

東海林さん:そうそう、蛍光灯は、真夏の昼間のような青白い光なので、働く真昼用の色ですね。家のリビングなどのリラックスするための空間には、夕日のオレンジのような暖かみのある色の照明がいいですよ。何億年も繰り返し人間がDNAに刻んできた「休息」の時間の太陽の色ですからね。要は、我々が生きてきた世界の理屈にさからわず、照明を楽しみましょうってことですね。 

美人に見せてくれるキャンドルの置き位置!

―せっかくだから、ちょっとでも自分をきれいに見せてくれるキャンドルの置き方などあれば…!

東海林さん:45度ですね。相手が隣や向かい側に座るとして、相手の見る方向から、相手と自分の間に三角形を描けるような場所に置くといいですよ。これは「モデリング効果」と言って、立体的な人間の顔に、魅力的に影をつくって見せられるんです。正面からだとのっぺりさせるし、真横すぎると顔に影ができすぎて不気味になってしまうんですけどね。これは美術館や博物館で彫刻なんかを当てるときの鉄則なんです。

―へえ~~! 彫刻気分で自分にライティング、ですね☆

東海林さん:あとは、これもメガネに炎が映ったりすると、相手の心に染み入るような気がしますね。瞳にも炎の光が映りこむときれいでしょうね。

―染み入りそうです。想像しただけでロマンチック!

東海林さん:照明っておもしろいから、そんなカンタンなことで恋愛が成就しやすくなるんだ!とか、若い女性たちに楽しんでもらえたら最高だと思いますね。 こういうおもしろさって知らないとソンだと思うんです。

―本当ですね。照明のチカラと楽しさを知って、なんだか新しい世界が広がった気がします! ありがとうございました!

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「光」のもつパワーのお話、いかがでしたか?

作り手のハートを感じながらキラキラのイルミネーションを楽しんだり、
キャンドルを映しこんだ好きな人の目を見てみたくなったり…
…してきたんじゃないでしょうか?

今回、お話を伺ったライティングデザイナー東海林さんの著書『デリシャスライティング』が絶賛発売中です。

光を使ったさまざまなアイディアを「光のレシピ」として多数紹介。

キャンドルをドルチェに見立てたり
雨降りの日に雨をキラキラさせたり
カーテンやソファーに光を仕込んでみたり…

ステキなレシピが満載、見てるだけでも楽しい一冊です。
おすすめですよ!