心の内に秘められた篝火……

秋に咲き始め、冬の間も鮮やかな赤い花を咲かせるシクラメン。花の形が炎のように見えることから、「燃える思い」のシンボルです。
古代、西欧では、恋愛の悩みに効くとされた“花の媚薬”。
ケーキに混ぜて、人知れず相手に食べさせると恋に落ちると信じられていたんですよ。

11月に生まれたあなたも、熱い思いを秘めた人。
一見、クールに見えますが、心の中ではふつふつと炎を燃やしています。
仕事でも恋でも、夢中になるとまっしぐら! 自分の思うままに、望みを遂げようとするでしょう。
一方で、嫉妬深いところがあり、ライバルからすると少々怖い人。競争心はほどほどに、怒りを上手に鎮める術を覚えたいものです。
物事の本質を見抜く力があるので、洞察力がよい方向に出ると、周囲の人々と力を合わせて、大きな仕事を成し遂げるでしょう。

ところでこの花、昔は「ぶたのまんじゅう」と呼ばれていたと知っていました? 英名「sowbread」をそのまま訳した名前ですが、あまりにもひどい命名だと思いませんか。
憐れに思った植物学者の牧野富太郎博士は「篝火花(かがりびばな)」と名づけました。当時、彼が勤めていた新宿御苑の温室で、歌人の九条武子が女友だちとその花を眺めながら、「まるで、篝火のようね」と話しているのを聞いて、名前がひらめいたと伝えられています。結局、あまり広まらず、属名Cyclamenの日本語読み「シクラメン」で落ち着きました。

花を見て、「篝火のよう」と表現する繊細さ、素敵な女性ですよね。
花の形から美を読みとく歌人のように、あなたにも美の本質を見抜く才能が潜んでいるはずです。
多くの花が消えていく晩秋、窓辺に赤いシクラメンを。
内なる炎に火をつけてくれるかもしれません。

●この花のミューズ(女神):九条武子(くじょう・たけこ1887~1928)
明治・大正を生きた美貌の歌人。京都・西本願寺の法主、大谷光尊の次女として生まれ、公爵家出身の九条良致(くじょう・よしむね)と結婚した。夫の勤務先であるケンブリッジ大学に同行するため、渡英。その後、1人で帰国し、夫をひたすら待つ歌を数多く残す。柳原白蓮、江木欣々(えぎ・きんきん)とともに大正三美人と呼ばれる。

○杉原先生の著作
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』
定価:3,024円(税込)A5判・並製・284頁 ISBN:9784906828357
聖樹研究家の杉原梨江子先生が約220種の花の名前の歴史、物語、言い伝え、「シンボル」となるキーワードを丹念に集めました。植物学とは異なる、花の文化誌です。
http://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=177
http://setsuwasha.com/


○杉原先生の携帯サイト(フィーチャーフォン)
ケルトの森 木精占術
http://celticforest.jp/


○杉原先生がラジオ出演!
月に1度、『花のシンボル事典』から季節の花を紹介しています。
毎月・第3火曜日の19時25分から。
番組名:エフエムふくやま・本の情報番組「ブック・アンソロジー」<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。
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