大震災、戦火を生きのびたイチョウたち。境内でご神木めぐりができますよ

東京都内にも思いのほかたくさんの巨樹があります。推定樹齢約300年を超えるものも多く、大震災、戦争を生きのびた貴重な木もあり、今も元気に歴史を伝えています。コロナの感染者数が減ってきたら、「TOKYOご神木めぐり」を再開したいと思います。もう一度、会いに行きたいご神木は東京の中心、赤坂にある日枝(ひえ)神社のイチョウたちです。

【木の特徴―乳柱が垂れ下がる】
とくに会いたいのは、男坂参道の鳥居のそばに立つ、大きなイチョウのご神木。どっしりと根を張って、空高く伸び、威風堂々と立っています。

樹齢は約300年。その間には関東大震災、東京大空襲がありました。
炎をくぐりぬけてきた木の多くは黒焦げや亀裂などが樹皮に見られますが、このイチョウには目立った傷はありません。
幹にはイチョウの古木に見られる「乳柱(ちちゅう)」がいくつも垂れ下がり、長い歳月を生き抜いてきたことがわかります。
古木とはいえ、年老いた印象も全くありません。根元からは新しい新芽が次々と伸びて、強い生命力が漲っています。
この木の下に立つとホッとして、見守られているような“安心感”が沸いてくるご神木です。

地元の人たちからも、とても愛されているのがわかります。
この日は早朝、会いに行ったのですが、ランニング中のおじさん、幹に手を当てて目を閉じ、しばらく過ごしていました。次にはサラリーマン姿の若い男性が木を見上げ、手を合わせて一礼、「行ってきます」とあいさつして去っていきました。毎日の習慣なのかな。
大きな木に触れ、その生命エネルギーをいただく感覚は誰もが感じるんだろうなあ。自分が暮らす土地に根づく木なら、なおさら身近に感じるのでしょうね。

境内には他にもイチョウがたくさん立っています。
鳥居茶寮前には樹齢約200年のイチョウ、末社の横に立つ細身のイチョウも注連縄が張られたご神木です。

一般の参拝客は踏み入れることのできない鎮守の森にも大きなイチョウがあるとか、、、境内でご神木めぐりができる楽しい神社です。

【歴史を伝える】
1945(昭和20)年5月、大空襲によって日枝神社の建物は末社山王稲荷神社を残してことごとく焼失しました。現在の建物は約10年の歳月をかけて、1958(昭33)年に再建されたものです。
本殿では狛犬ではなくて、お猿さん(神猿像)が迎えてくださいます。猿は山の守り神。「猿」は「えん」とも読むことから、縁結びのご利益。また、「さる」は「まさる(勝る、魔が去る)」として、勝運を呼ぶ神社としても信頼されています。

【イチョウの教え】
勝利は、平常な心をもった人のもとに訪れる。

【この木に会いに行こう!】
東京メトロ・千代田線「赤坂」駅出口2番から徒歩3分、南北線、銀座線「溜池山王」駅出口7番から徒歩3分など。

○杉原先生の著作
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』
定価:3,080円(税込)A5判・並製・284頁 ISBN:9784906828357
⇒聖樹研究家の杉原梨江子先生が約220種の花の名前の歴史、物語、言い伝え、「シンボル」となるキーワードを丹念に集めました。植物学とは異なる、花の文化誌です。
http://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=177


○杉原先生がラジオ出演!
月に1度、『花のシンボル事典』から季節の花を紹介しています。
毎月・第3火曜日の19時25分から。
番組名:エフエムふくやま・本の情報番組「ブック・アンソロジー」<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。
「YouTube(動画ラジオ)」でも聞けます。
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』より アネモネ
https://www.youtube.com/watch?v=F-IjVa0AdRw