「スギナラ一緒になりました」愛の絆を深めるご神木

ご縁。
長く心に残る人との出会いは、スーッと、自然とつながっていくような気がします。無理やりに、自ら会いに行こうとした人とは疎遠になっていきました。反対に、自分では遠いご縁と思っていた人が急接近! なんてこともあって、案外、そういう人とのほうがつかず離れず、いい感じに、長~くご縁を結んでいる・・・という現実に不思議に思うこともあります。

今日ご紹介する不思議なご神木も、偶然、そばに芽吹いた2本が少しずつ寄りそって、1本の木となって、いっしょに伸びていこうと思ったのかもしれません。

日光東照宮から二荒山神社(にっこうふたらさん・じんじゃ)へと続く参道を歩いて、まず出会う、神門手前の「縁結びのご神木」。
スギにナラの木が宿り木となってくっつき、1本の木として立っています。看板には「すぎ(き)ならいっしょに!」と書かれ、誰もが思わず、好きな人の顔を思い浮かべてしまうでしょう。同じ樹種の木が途中でくっついた巨樹はよく見かけますが、全くちがう種類の木が1つの木となって生きていることがなんとも不思議なのです。

↑鳥居前に立つ縁結びのご神木。看板には「すきならいっしょに」の文字が描かれています。

男体山をご神体とする日光二荒山神社。境内はすがすがしい空間が広がります。神秘的というより、ほっとあたたかな、明るい気の流れる境内には、このほかにも、スギのご神木がいくつも立っています。スギの姿そのものが「縁結び」を象徴しているような、連理のスギがいっぱいです。「連理」とは、別々に芽吹いた木が途中で1本になって伸びていく木のこと。あるいは、根元は1つなのに、途中で、幹が2本、3本と伸びる形をした木のことです。

神門を入って左手には、家庭円満の「親子杉」。根元で3つに分かれ、1本の杉に3本が立っています。ご祭神親子のご神徳でこの形になったと伝えられ、家族の絆を強めてくれる木。

右手には、根元で2つに分かれた「夫婦杉」。こちらは夫婦円満、男女和合のご神木です。日常でのよい出会いとともに、血を受け継いでいくという生命の絆を結ぶ力も秘めたすばらしいご神木。いつ会っても、仲睦まじい、あたたかな気を感じます。

まっすぐに天に向かって伸びていくスギの力は、人生で大切な人と出会うように、一直線に導いてくれるのです。


↑いつからここに立っているのでしょうか。樹皮は苔むしています。雨上がりの翌日、苔を触るとふわふわ、緑の匂い。その感触がとても好きです。

★この木を見るポイント
⇒縁結びのご神木の形「連理」のスギがいっぱい。スギとナラの木がつながっているところをしっかり見てください。2本の幹がともに伸びる夫婦杉、3本いっしょの親子杉も。

【スギの教え】好きなら、離れてはいけません。

【歴史を伝える】
二荒山神社は二荒山(現在の男体山)をご神体とした神社で、日光の氏神さま。本殿の裏手にある山の中の洞屈に湧く「薬師の霊泉」は目の病気に霊験あらたかと伝えられています。すぐそばにあるカフェではこの霊水で入れたコーヒーをいただけますよ。

【この木に会いに行こう!】
JR日光駅・東武日光駅より東武バス日光「中禅寺温泉」または「湯元温泉」行き乗車7分、(86)「西参道」バス停下車徒歩7分

○杉原先生の著作

『偉人の花ことば』
定価:1,540円(税込)四六判・並製・240頁 ISBN:9784906828814
⇒ゴッホのヒマワリ、シャネルのツバキ、宇野千代のサクラ……。心をうるおし、背中を押してくれ、愛や感謝、励ましを伝えてくれる言葉たち。偉人たちが花に託した思いとは?
https://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=253


『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』
定価:3,080円(税込)A5判・並製・284頁 ISBN:9784906828357
⇒聖樹研究家の杉原梨江子先生が約220種の花の名前の歴史、物語、言い伝え、「シンボル」となるキーワードを丹念に集めました。植物学とは異なる、花の文化誌です。
https://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=67


○杉原先生がラジオ出演!
月に1度、『花のシンボル事典』から季節の花を紹介しています。
毎月・第3火曜日の19時25分から。
番組名:エフエムふくやま・本の情報番組「ブック・アンソロジー」<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。
「YouTube(動画ラジオ)」でも聞けます。
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』『偉人の花ことば』から季節の花をひとつご紹介。2022年5月「バラ」
https://www.youtube.com/watch?v=mEP9U9ywzug