収穫を終わったばかりの稲穂に、赤とんぼが止まっていました。
静かでのどかな田園風景の一場面。
9月に訪れた鹿児島と宮崎の残像が、まだまだたくさん残っています。
こんにちは、エミールです。お元気でしたか?


秋の彼岸を目前にした9月の半ば、4日間ほど南九州へと足を運びました。
目的は陶芸家、佐藤浩先生の工房を見学させていただくこと。
焼物が大好きな私にとっては、まさにネコに鰹節!というところです。

九州新幹線を利用したので、鹿児島からクルマを走らせ(といっても私はのんきに車窓見学)て、宮崎まで。
ところどころに、ポツンポツンと見える彼岸花の姿やコスモスに、優しい日本の秋をライブで見る思いです。海岸線に入ってからは沖の白波がレースのように見えて、南国の海独特の優雅な雰囲気にイルカさん探しもしばし忘れ、のんびりとした気分を満喫しました。
たぶん、人はこんな時に「幸せ」って心から感じているのだと思います。
何気ない日常的な景色のワンシーンに…。

ちょっぴり補足すると、北国の海を見ながら育った私にとって、南国の海はどんなに波がたっても荒々しさは全く感じない優しい海なのです。日本海が厳しい父親だとしたら、南の海はおおらかな母親という印象でしょうか。
もしかして海のそばにあるヤシの木やソテツが、余計にそう感じさせるのかも知れません。

さて、鹿児島を発って3時間余り。
さぁ、つきましたよ! 工房潮人に!(チョージンと読みます)

佐藤先生と、お母様、そしてスタッフの女性に出迎えて頂きました。
工房の中に入れて頂くと、
「わーー、鰹節…おっと。焼物がイッパイ~」

初めて佐藤先生の作品を見せて頂いた時の感動がよみがえり、遠い昔に出会った懐かしい人たちに再会しているみたい。そんな不思議な気持ちになりました。
様々な器を手に取り、そして大きな作品に触っていると、この土はどこから来たのかなぁと、思わずそんな気持ちにもなってしまいます。

みなさんも何かに出会った時、遠い昔にどこかで会ったことがあると思ったことはありませんか?
もちろん、それは人であればなお更の事。
記憶はどこかに水源地があって、縁のあるものどうしは繋がっているのだと。
ただそのことに自分では気が付いていないのだと私はそう思います。

佐藤先生の作品、全てに感じるテーマは「ゆるし」です。温かく包み込む大きな愛の正体を、私は許しだと思っています。
小さくても大きさを感じさせる存在。
多少いびつでも、それを以てして佳き事として愛でる。
ダイナミックなのに繊細な感じがするのは、土の中に先生の魂が込められているからなのでしょうか。

そんな事をぼんやり考えていると、
「せっかく、お出でになったのですから何かお造りになりませんか?」
と気軽に仰ってくださり、ご準備もばんたんとの事。
「イエイエ、不器用なものですから」
とご辞退をするものの、先生のお母様までもが背中を押してくださり、
「では、ご好意に甘えさせて頂きます」
と、にわか弟子はおそるおそるのチャレンジ開始です。

あーーー手が勝手に!とか、あーそうじゃない~! しまったーーー行きすぎた!等など。
初めての体験に熱くなってしまい、気が付けばお茶碗、マグカップ、花器と次々に出来上がっていました。

パートナー(兼運転手)は?といえば工房の近くで、
「生まれて初めて見た!」
と工房のわきに咲いていたナンバンギセルの花に感動して夢中になっていた模様。戻ってきて私の力作を一瞥するなり、
「さすが! 佐藤先生が手を添えてくださったおかげで、出来栄えが違う」
ですって…。
事実、先生が伴走してくださらないとこの世に誕生しないものばかりでした (+_+)

ここでつくづく、土を形にする、つまり「未知のものを形にする」ことは、とても難しいものだと認識した次第です。
考えても思ったようにはならず、かといって何も考えていないとグルグル巻の単なる土の塊…、以上終わり、だし。

ここまで到着しても、その次の工程で待っているのは絵付け。
そして、火の神様からの洗礼を受けて、炎の中から誕生。
ただし最後の試練は、私のような不束ものが弟子の場合は、
「お師匠さま、割ってしまいました」
と想定外のアクシデントがあるかもしれないし…。

やきものが教えてくれるものはたくさんありました。
工房を後にしながらずっと、姿が見えなくなるまで手を振ってくださっていた、みなさんの温かい笑顔が忘れられません。
ただ、台風で避難をしている山羊の小豆クンに会えないのが少し心残りでした。
ちなみに工房敷地内の草刈り隊長だそう。
確かにヤギさんにとってはやりがいのある仕事ですよね?

※案内:陶芸家chojin潮人オフィシャルサイト
http://toukouchojin.com/

旅は素敵です。
初めての体験、そして何よりもうれしい事は、出会いと再会があること。
今回の旅でお世話になった皆様に、心から感謝致します。

番外編ですが、南九州への往復には新幹線を使いました。
東京駅発am6時、鹿児島中央駅着pm1時、7時間弱。
なんと! 早いことでしょう。
うたた寝を楽しみ、本を読んでいるうちに南国のホームに滑り込んでおりました。

     エミール




初めてのろくろ体験 手伝ってもらえればこそ、です!



工房のわき、ススキの根元に咲いていたナンバンギセル



歓迎していただいた皆さまと、出来上がった作品を前に