妖しく、美しい白い花  “諸行無常の響き”の象徴

かつて、京都・東林院の庭に樹齢約三百五十年の沙羅双樹が立っていました。幹が途中から二股に分かれた大樹。
今、この庭にあるのはその子供たちです。根元にも小さな木が育ち始めています。

朝、白い花が咲き、夜、花のつけ根からそのまま、すとんと落ちる、「一日花」。
梅雨の頃、苔むした庭いっぱいに首だけを並べたように落ちた花の姿は美しく、妖しい。まったりとした白い花びらは日本女性の秘めた色香を具現化しているように思えます。

沙羅双樹のシンボルは「無常」。
『平家物語』にあるように“諸行無常の響き”の象徴として白い花が存在しています。
お釈迦さまが亡くなった時、臥床の四隅にあり、いっせいに花咲いて、たちまち枯れて悲しんだと伝えられます。

東アジアでは天空を飾る宝樹。
一分一秒を悔いなく生きることを教えてくれる花です。

【この木に会いに行こう!】
妙心寺 東林院
市バス・京都バス「妙心寺前」下車、徒歩6分。JR山陰線「花園駅」下車、徒歩8分。京福電車「妙心寺駅」下車、徒歩12分。
(毎年6月15日~30日「紗羅の花をめでる会」のみ公開 ※要確認)

○杉原先生の著作
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』
定価:3,080円(税込)A5判・並製・284頁 ISBN:9784906828357
聖樹研究家の杉原梨江子先生が約220種の花の名前の歴史、物語、言い伝え、「シンボル」となるキーワードを丹念に集めました。植物学とは異なる、花の文化誌です。
http://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=177


○杉原先生がラジオ出演!
月に1度、『花のシンボル事典』から季節の花を紹介しています。
毎月・第3火曜日の19時25分から。
番組名:エフエムふくやま・本の情報番組「ブック・アンソロジー」<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。
「YouTube(動画ラジオ)」でも聞けます。
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』より *バラ(2020年5月)
https://www.youtube.com/watch?v=XVeAc-axEoE