野菜・果物+ご飯やパン(炭水化物)だけの食事をする女性が増えています。肉や魚、乳製品や卵などの動物性たんぱく質、あるいは豆腐や油揚げなどの植物性たんぱく質をとると太ってしまうイメージがあるからでしょうか。

残念ながら、たんぱく質不足が様々な症状を引き起こすことは、あまり知られていません。たんぱく質は、脂質、炭水化物と並ぶ3大栄養素のひとつ。生きていくために欠かせない体をつくる大切な栄養素です。
今回はたんぱく質の働きと、何をどれだけ食べればいいか、一緒に学んでいきましょう。

人間の体は「細胞」でできています。この細胞の70%は水、残りの成分のうちでもっとも多いのが「たんぱく質」です。つまり筋肉、爪、皮膚、内臓、髪の毛など、私たちの体は
丸ごと「たんぱく質」
だとも言えるのです。ヒトの体には、10万種類以上のたんぱく質があるというから驚きです!
たんぱく質は20種類のアミノ酸から成り、この中で11種類は体内(自力)でつくり出すことが可能ですが、残りの9種類は食べ物で補わなくてはなりません。この9種類はとても大切なので、「必須アミノ酸」と呼ばれます。

「アミノ酸飲料」とテレビのCMでしきりに宣伝している清涼飲料水は、「たんぱく質をつくる(体をつくる)アミノ酸が入っているから体にいい」というのがウリなのです。
ただし、そういった清涼飲料水には糖分がたくさん含まれていることが多いので、食事のおかずから、たんぱく質をとることをおすすめします。

たんぱく質は体と内臓そのものをつくるだけではありません。
病原性を持つ細菌を攻撃してくれるものや、栄養を運ぶもの、ホルモンとなるものなど、身体機能を維持するために欠かせない存在です。
そのため、私たちの体の中では毎日絶えずたんぱく質が消費されています。だから、毎日せっせと、たんぱく質を食料からとらなくてはいけないのです。自分の体の中でつくり出すだけでは、足りないのです。

たんぱく質はホルモンにもなるため、足りないと女性ホルモンのバランスがくずれ、生理不順など生理に関するトラブルが起こりやすくなります。
また、生きていく上で必須な栄養素だけに、足りなくなると体はあらゆるところからたんぱく質を持ってきて「やりくり」をしようとします。その結果、筋肉になるたんぱく質が不足して筋力が落ち、体力不足で疲れやすいといった症状も出てきます。時に腰痛を引き起こすこともあります。

さらに、エネルギー源のたんぱく質が底を尽いてくると免疫力が低下し、病気になりやすいというとんでもない結果になるのです。
また、動物性たんぱく質に含まれる必須アミノ酸の中には、精神を安定させて、良質な睡眠をもたらす成分もあり、不眠に効くとも言われています。
野菜とご飯だけの偏った食事をしている人は、この機会に見直しましょう。

「美肌でプルプルになるモトは、コラーゲン」と言われますが、体の中で最も多いたんぱく質が「コラーゲン」です。コラーゲンもたんぱく質だったのですね~。
「肌のキメを整える」なんて小さい働きをしているのではなく、「細胞の形や位置を支える基盤になり、細胞同士を繋げる糊(のり)の役目を果たしています。
そして、コラーゲンを飲めば、美肌に直結すると勘違いしてはいけません。
コラーゲンもたんぱく質ですから、一番の最小単位はご存知のようにアミノ酸。つまり、
コラーゲンを飲む 

体の中でアミノ酸に分解される

皮膚になるかホルモンになるか、内臓になるかエネルギーになるか、何になるか分からない。その時に体が最適と判断した体の一部になる
という流れです。顔のお肌になるだけではありません。
毎日、たんぱく質を適量にとり、ビタミンCも一緒にとって、やっとコラーゲンがつくり出されるのです。でも、コラーゲンがたっぷり合成されるように食事に気をつかえば、巡り巡ってお肌にもコラーゲンが回り、美肌だって夢じゃないってことです。

運動後30分以内にたんぱく質を摂取すると、使った筋肉の修復をしてくれることが分かっています。
特に短距離走など、瞬発力が必要な運動(無酸素運動)の筋力トレーニングで効果を出すには、肉や魚、卵、豆などの良質なたんぱく質をとってください。一緒に糖質(炭水化物)、ビタミン、ミネラルもとると効果絶大です。

ここで栄養の話に移りましょう。毎日、何をどれくらい食べればいいのでしょうか。
たんぱく質はとり過ぎても、少なすぎてもダメなのです。そして、たんぱく質だけではもちろんダメ。いろんなものを食べて、ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂質と一緒に摂取しなくてはいけません。
ちなみに、たんぱく質には、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質があります。動物はヒトと同じように体はたんぱく質でできていますし、植物でさえもたんぱく質は含んでいるのです。
では、植物性たんぱく質だけでもいいのかというと、そうではありません。植物性たんぱく質は栄養価がそれほど高くないため、多く食べる必要があり、毎日摂取するには効率が悪くなってしまいます。反対に動物性たんぱく質だけになると、今度は脂質が多すぎて太ってしまいます。
食べ物として私たちが摂取するたんぱく質は、効率良くとれて栄養価の高いものがふさわしいのです。植物性と動物性、どちらもとることが大切です。
以下の動物性たんぱく質と植物性たんぱく質は「良質」なたんぱく質ですので、参考にしてください。

動物性たんぱく質
乳・乳製品・・・・・牛乳、脱脂乳、粉乳、練乳、ヨーグルト、チーズ
卵・・・・・鶏卵、うずらの卵、ピータン
魚介・肉・・・・・鮮魚、生肉、魚や肉の加工品

植物性たんぱく質
豆・豆製品・・・・・豆腐、油揚げ、納豆、凍り豆腐(高野豆腐)、枝豆、乾燥豆
注)豆、豆製品の中でも大豆は良質なたんぱく質

「何を食べればいいのかは分かった。でもどれだけ食べればいいの?」
と思う方もいるでしょう。
そこで、1日1600kcal(カロリー)の食品目安を発表している女子栄養大学の資料を参考にして、朝・昼・夜のメニューを考えてみました。たんぱく質以外の栄養素もきちんととれるようなメニューになっています。
ちなみに1600kcalは「家庭の主婦など軽い労働をしている成人女性に適したエネルギー」としています。

1日のメニュー例(一人分)
<朝ごはん>

パン・・・・・・6枚切1枚
バター・・・・・10g
牛乳・・・・・200cc
ヨーグルト・・・100g
卵・・・・・・1個
りんご・・・・1/2個
<昼ごはん>

お米・・・・・ご飯茶碗一杯
焼き魚・・・一切れ(約70~80g)
冷奴・・・・豆腐1/3丁
小松菜のおひたし・・・・100g
きのこと大根のお味噌汁・・・・きのこ+大根で100g
<夜ごはん>

お米・・・・ご飯茶碗一杯
豚肉のしょうが焼き・・・・薄切り豚肉3枚、葱50g、しょうが一かけ
キャベツの千切り・・・・・100g
じゃがいもとわかめのお味噌汁・・・・・じゃがいも中1個、わかめ10g

と、こんな感じです。
女子栄養大学が発表している「四群点数法」を参考に、いろいろと組み合わせて、毎日の食事のメニューに生かしてください。
<ひとこと>
私は、若い頃に食事を抜いてダイエットをし、野菜と炭水化物、植物性たんぱく質だけを食べて健康だと思っていた一人です。その頃は冷え性や倦怠感があり、不健康に痩せていきました。でも、栄養不足(主にたんぱく質不足)が原因だとはツユほどにも思っていなかったのです。栄養の知識がなかったからです。

ところが、歳をとって運動を始めたのをきっかけに、栄養の本を読み、たんぱく質をきちんと食べ始めると筋肉がつき、体重の減少が止まりました。そして、筋肉は熱を生み出しますから「冷え性」もだいぶ改善されました。
たんぱく質は重要な栄養素です。食生活が偏っていないかを見直して、足りなければ毎日食べて補いましょう。

<参考文献&参考ホームページ>
『たんぱく質入門』武村政春著(講談社)
『食と健康のホントがみえる栄養学』古畑公 他著(誠文堂新光社)
女子栄養大学ホームページ
http://www.eiyo.ac.jp/daigaku/