縁結びの神様、出雲大社のご神木。すてきな出会いが次々と起こります

【木の特徴】
堂々たる姿を見よ!樹皮の生々しさを見よ!ダイナミックな生命力を感じよ!
とにかく背が高く、カメラにおさまりきらない。
幹にはごつごつしたコブがいくつもあり、人間の歴史などおかまいなしに成長してきた力強さがありました。
根は土からむき出しで、片足は大地へとずいずいっと伸ばし、もう片足は歩き出さんばかりにシコをふんでいる。なぜか岩を抱えこんで立ち上がっています。もしかすると、かつては、このあたりを歩き回っていたのではないかと思わせるほどの異形の立ち姿をしていました。
古来、大樹には神が降りるという、まさに神の依代。
社殿に祀られるのは「神皇産霊神(かみむすびのかみ)」という女神さまです。一千年の昔、ここに芽生えたのは、この神皇産霊神さまの依代となる使命ゆえではなかったでしょうか。

小さな社の前に聳え立つムクノキのご神木。しばらく座って眺めていたら、1時間も経ってしまっていました。それでも、どうにも立ち去りがたく、帰りかけては振り返り、再び見上げていると、地元の人らしいおばあさんが声をかけてきてくれました。
「旅の人?」
「もっとムクノキについて知りたい」と言うと、その方はこの辺り、真名井(まない)で解説ボランティアをしていたと、いろいろと説明してくださいました。そして、神皇産霊神様でのお参りの言葉も教えてくださって、一緒に唱えました。

「幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)護(まも)りたまえ 幸(さいわ)いたまえ」と3回唱えるのですよ、と。

思いがけない、心優しい気持ちになったひととき。出雲は本当に、縁結びの神さまと出会える場所だと思います。無理やり、誰かとご縁をつなごうとしなくても、神さまはこうやって、素敵な人との出会いを導いてくれるのでしょうね。

★この木を見るポイント
幹にはごつごつとした隆起があり、コブがあり、うねりがある。根は土からむき出しで、岩を抱えている。

【ムクノキの教え】
ご縁がご縁を呼ぶ。

【歴史を伝える】
命主社は出雲大社の摂社です。
「ご神木が先か、神社が先か?」そう、問われると、この神社は確実に、ムクノキが始まりのように思えます。はるか昔から、ムクノキはここに立っていて、この地で生きる人々が木に手を合わせて、崇拝をするうちに、お供え場所ができ、やがて、小さな社殿が立てられ、徐々に神社と呼ばれるようになったのではないでしょうか。毎朝、お供えをする人もいたでしょうし、思いがけず、お願いごとがかなう人もいたでしょう。
この地域で生きる人々の幸せと健康を、一千年にわたって見守り続けてきた、ご神木です。
ムクノキの向こうには、小さな祠が見えます。ご祭神は「神皇産霊命」。出雲大社のご祭神「大国主命(おおくにぬしのみこと)」をさまざまな危機から守り、国造りを助けました。社殿が大きな岩の前に建てられていることから、古代の磐座(いわくら)が神社の始まりともいわれています。(諸説あり)

【この木に会いに行こう!】
出雲大社境内から徒歩約5分。
このムクノキ、出雲大社から約5分と近いのですが、少々わかりづらい場所にあるので、見逃さないようにご用心。本殿を背にして、鳥居をくぐり左方向へ。社務所とは反対側に歩いていくと石橋があり、苔むした川を左手に見ながら、まっすぐ進みましょう。民家が続き、本当に会えるのかと不安になりますが、そのまま歩き続けて、看板が見えたら、もう安心。矢印に従って、細い小道を進むと、突然、大きな大きなムクノキが出迎えてくれます。

○杉原先生の著作

【新刊】『偉人の花ことば』
定価:1,540円(税込)四六判・並製・240頁 ISBN:9784906828814
⇒ゴッホのヒマワリ、シャネルのツバキ、宇野千代のサクラ……。心をうるおし、背中を押してくれ、愛や感謝、励ましを伝えてくれる言葉たち。偉人たちが花に託した思いとは?
https://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=253


『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』
定価:3,080円(税込)A5判・並製・284頁 ISBN:9784906828357
⇒聖樹研究家の杉原梨江子先生が約220種の花の名前の歴史、物語、言い伝え、「シンボル」となるキーワードを丹念に集めました。植物学とは異なる、花の文化誌です。
https://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=67


○杉原先生がラジオ出演!
月に1度、『花のシンボル事典』から季節の花を紹介しています。
毎月・第3火曜日の19時25分から。
番組名:エフエムふくやま・本の情報番組「ブック・アンソロジー」<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。
「YouTube(動画ラジオ)」でも聞けます。
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』より アマリリス(2021年12月)
https://www.youtube.com/watch?v=Oh-gQugk4V0