木の下で弟といっしょに遊んだ思い出のイチョウ。この木を守るため、山門に穴があけられています

【木の特徴―樹皮にヤケドあと、山門の穴から枝を伸ばす】
イチョウは水分が多く、古来、「火伏せの木」と呼ばれるご神木。

被爆後に米軍が撮影した白黒写真にはイチョウが延焼を止めた様子が写っています。
安楽寺のある神田橋周辺の川沿いは火災に包まれ、多くの家屋が焼かれました。
お寺の周り三方は家屋が燃え尽くされ焼け野原ですが、イチョウを境に、民家や建物が焼け残っています。本堂は全壊状態でしたが、イチョウに守られ、太い柱が焼け残りました。とはいえ、イチョウも炎にまかれ、枝葉を失い、ヤケドのあとが幹の上部に残っています。
戦後しばらく、扇型にならない奇形の葉がよく出ましたが、そのうち出なくなったといいます。

新しい山門を造る時、邪魔になった枝を伐らずに、屋根に穴をあけて枝を通し、元気に育つように工夫されています。
春から夏には青々と繁り、秋には黄金色に染まって、美しい被爆イチョウ。親木は東京・麻布の善福寺にある逆さイチョウといわれています。

【被爆を伝える】
被爆当時15歳だった前住職の登世岡さんは原爆で弟さんを亡くされました。
「今でも私はまだ平和記念資料館へよう入らんのです。原爆のことを思い出しますから。あの日、弟がいつまで待っても帰らないので、母親と探しに出かけ、見つけたときには顔がわからないほど、全身に大やけどをしていました。ベルトのバックルでやっと弟だとわかりました。自宅に戻って6日後、息を引き取りました。12歳でした」。
登世岡さんの文章が2017年8月6日の平和宣言で読まれました。

【この木に会いに行こう!】
広電バス牛田方面ゆき、「牛田大橋」下車。徒歩3分。広島駅から徒歩約30分。

【被爆樹を知っていますか?】
広島市では、原爆の爆心地から約2キロ以内で被爆し、現存する161本を「被爆樹木」として登録し、保護しています。私はこの原爆を生きのびた木々を訪ね歩き、木のそばで生きてこられた被爆者の方々のお話を聴いてきました。あまり知られていない被爆樹のことを知っていただきたくて、季節ごとに少しずつ紹介します。

○杉原先生が広島の被爆樹、1本1本を訪ね歩いて紹介した本です。
『被爆樹巡礼 原爆から蘇ったヒロシマの木と証言者の記憶』実業之日本社
ISBN:9784408008813
https://www.amazon.co.jp/dp/4408008818/

○杉原先生の著作
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』 説話社刊
定価:3,024円(税込)A5判・並製・284頁 ISBN:9784906828357
⇒聖樹研究家の杉原梨江子先生が約220種の花の名前の歴史、物語、言い伝え、「シンボル」となるキーワードを丹念に集めました。植物学とは異なる、花の文化誌です。
http://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=177


○杉原先生の携帯サイト(フィーチャーフォン)
ケルトの森 木精占術
http://celticforest.jp/


○ラジオ出演
月に1度、『花のシンボル事典』から季節の花を紹介しています。
毎月・第3火曜日の19時25分から。
番組名:エフエムふくやま・本の情報番組「ブック・アンソロジー」<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。
※「エフエムふくやま」公式サイトのWEBラジオでお聴きになれます。「YouTube(動画ラジオ)」でも聞けます。
『花のシンボル事典』ナデシコ放送中
https://www.youtube.com/watch?v=uByjFNVZoD8