縁結びの霊験あらたか

冬至です。街角や公園ではサザンカやツバキの花が目立つようになってきました。その足元では大きな葉の間から、茎をすーっと伸ばして黄色いツワブキの花も咲き始めました。

こうした冬に咲く花の中で、ツバキはご神木とされることが多い植物だといいます。例えば出雲の八重垣神社にある連理のツバキは、2本の木が生長するうちに合体し1本となった夫婦和合の象徴として、縁結びのご神木とされています。
そもそも八重垣神社は、スサノオノミコトがヤマタノオロチ退治をする際にクシナダヒメを隠すために作った「八重垣」に由来する神社です。
「八雲立つ 出雲八重垣 妻込めに 八重垣造る その八重垣を」
ヤマタノオロチを退治したスサノオノミコトは、この地でクシナダヒメと夫婦となり宮を作りました。“天津神(あまつかみ)”のスサノオノミコトと“国津神(くにつかみ)”のクシナダヒメが結ばれた、まさに縁結びの原点、それが八重垣神社なのです。その境内で育つ連理のツバキですから、きっと縁結びの霊験あらたかでしょう。

日本の原産種ツバキは、奈良時代以降、遣隋使や遣唐使によって中国に運ばれ観賞用として栽培されるようになりました。時代が下って18世紀ごろには西欧にもたらされ「カメリア」と名付けられて、数々の栽培品種が作られています。ちなみに名前の由来は、ツバキをかの地にもたらした宣教師「カメル」に由来するとか。

「花束はきらい。白いツバキが一輪あればいい」
シャネルブランドを作り上げたファッション・デザイナーのココ・シャネルの言葉です。美を追求し続けたシャネルの心をとらえた、ツバキの花の魅力。日本人と西欧の人々の心も、その霊験で結び付けてくれているのかもしれません。

※参考文献・資料
『暮らしのなかの植物』斎藤たま:著/論創社
『縁起の良い樹と日本人』有岡利幸:著/八坂書房
『日本俗信辞典』鈴木 棠三:著/角川書店
『偉人の花ことば』杉原梨江子:著/説話社
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』杉原梨江子:著/説話社
「八重垣神社」ホームぺージ  https://yaegakijinja.or.jp/
「季節の花300」ホームぺージ https://www.hana300.com/