この季節になると昔の人たちは、夕焼けの時間になると野原や山まで出かけて「虫きき」をしたそうです。平安時代にはすでに、虫の声を聞きながら月見をする習慣もありました。四季折々の景色や、自然の音色を愛でる日本の感性を誇りに思います。秋が深まり、だんだん虫の声が弱くなってしまうことを、残り虫というのだとか・・・。なんとも情緒的ですね。
ところが外国のひとにとっては、複雑な音に聴こえるみたいです。和風の老舗での会食の時、庭さきで鳴く虫たちの声を「あのノイズは?なに・・・?」と、こんな経験があります。

思うに10月は、虫の声で心を癒し、月を眺めながら、心を浄化するのが一番、似合う月ではないでしょうか? どこかに夏のかけらは落ちていないものかと探しても、もう見つからないし。それでは、冬はどこ?といえば、まだまだ風の中にだって、暴れん坊の北風の影はないし。灼熱にも、極寒にも太陽が加勢しない季節。
夕陽が最後の輝きを残しながら、西の空に消えるとき、一瞬だけ金星とぶつかりあう時に感じる、まるで「間」のような景色に心を奪われているときと、ちょっとだけ似ています。

私はそんなとき、いつもは忘れていることを思い出してしまうの。大昔のことでもなくて、去年のことでもないし、子供の頃とも違う。もしかしたら、これから先にしようと思って忘れたふりをしていることかもしれないし。心はここにあるようでいて、どこにもない、そんな感覚。とりとめのなさを許してくれるのが10月。
じっとそのまま・・・。本当にただそのまま・・・。
自分の心を最大限自由に解放してもいい優しい時間。自由にした心は、しばらくしてから、幸せにみちた新しい心に変って、遠い夜空からたくさんの星を抱えながらかえってくる。

心だって時々は、かくれんぼしたい。
誰だってホンネをいえば、そうなのではないかしら。だから、ホントはかくれんぼ組のあなたはこの月だけは、素直に心に従っていいのではないかしら? 過去、現在、未来のどこにも属していない、時の概念が存在しない「間」を私も持ってみるつもり。

9月に見つけた山の奥にある、キッチンつきの小さなお部屋。地元の人たちがやってくる温泉と、川のせせらぎ。月を見ながらぼんやりと・・・。深まりゆく、秋の中につつまれた贅沢ができるなんて! なんて素敵なこと。また、出かけようと、今からワクワクしてしまいます。

さて、10月といえば西洋文化の中では、「魔女の大晦日」がありますね。ハロウィーンの起源である、サーオインのお祭りは一年の終わりを告げる、10月31日の真夜中におこなわれる魔女たちのパーティです。古い火を消して新しい火を灯す儀式の間は、世界中がどの時間にも属すことのない「不思議な時間」。
時の外にいるので、現実の空間と超自然界との間にあるのは、薄いベールが一枚あるのみです。邪悪な霊が入りこまないように、このときに燃やす炎は、火の精霊の力をかりるといわれています。
ハロウィーンの歴史をたどってゆくと、古代より行われてきたお祭りにたどりつきます。
そのお祭りが歴史を経て、やがてキリスト教の聖人たちが、この世へと還ってくる「万聖節」となるわけですが、全てのキリスト教の聖人たちが集まる「All Hallows' Eve」
それが、なまってハロウィーンになったのがこのお祭りの由来です。
カボチャのランタンは、アメリカで誕生したもので、イギリスではダイコンをきりぬいたものがランタンになっているとか? そしてこどもたちにとっては、一年で一度だけ、いたずらをしても叱られない嬉しい日です。
 
また10月23日は太陽が蠍座へ入宮します。この日は東洋の暦、二十四節気では霜降(そうこう)。
“露が初冬の気と結ばれて、霜となって降るころ“なのでその有様のまま“霜降”。
北の国や高い山では霜降便りが届きはじめることでしょう。

次第に冬支度の季節を迎えます。体調を崩さないように過ごしましょうね。

   エミール


ツユクサは夏の花ですが、9月の末に新宿御苑で群生しているのを見つけました。


花だけに注目するとこのように見えますよ。


お知らせ

エミール先生の「アトリエ便り」では、随時情報を発信しています。みなさまのご訪問お待ちしています。
http://kaminosachi.com/
エミール先生の日々のエピソード
ブログで発信中です~!