家の守り神「土公神」を味方につけて、夏を乗り切る

ところで7月21日は「土用の丑の日」。
今年は養殖鰻の出荷数がここ数年では比較的多いらしく、市場価格も昨年よりも安めだとか。日本鰻は絶滅危惧種だけにひと安心です。

鰻はもちろん食べたいのですが、じつは土用の丑には鰻に限らず「う」の字が入るものを食べるとよいとのこと。だから、「うどん」「梅干し」「瓜」などを食べてもいいそうです。ということは一種のおまじないなのでしょうか?

そこで、そもそも土用とはなんだろうと気になって、おまじない博士のマーク・矢崎先生に聞いてみると、「土用は季節の変わり目に、クッションの役割をする時期なんです」と教えてくれました。

暦では、春夏秋冬それぞれの季節の変わり目にあたるおおよそ18日間が土用とされます。
暦の基礎になっている古代中国で生まれた「五行説」では、「木火土金水(もっかどこんすい)」で世界は成り立っていると説きます。
そのうち「土」からは、植物が育ち、火山や温泉が熱を出し、鉱脈が金属を生み、水が湧きます。つまり「土」は、すべての要素の取り持ち役と考えられたのです。
「木の季節の春」「火の季節の夏」「金の季節の秋」「水の季節の冬」とされますが、その間には「土」である土用がはさまり、次の季節への準備期間になるというわけです。
ちなみに2020年の土用の入りは、冬が1月18日、春が4月16日、秋は10月20日となっています。

「土」には「土公神(どこうじん)」という神様が宿るとされています。
土公神は家の守り神で、「春は竈(かまど)」「夏は門」「秋は井戸」「冬は庭」と居場所を変えるそうですが、じつは土用の時期に、この土公神が宿る土を犯すと祟るといいます。土を掘り返したりすることがご法度になるのです。
この神様は、一部の地域では「土用坊主」という妖怪にも例えられています。土用に土をいじることは、「土用坊主」の頭をかきむしることになるので怒らせてしまう、というのです。

ちょうど梅雨が終わり一番暑くなる夏土用。
昔は、一年でもっとも気が乱れる「裏鬼門」のとき、ともいわれていました。だからあくせくせずに、身体によいものを食べて体調を整えようということなのでしょう。

新型コロナも気になりますが、暑い時期のマスク着用による「熱中症」対策も話題になっています。リモートワークなどを活用して無理をしないようにしたいもの。
とくに畑仕事、庭いじりは「土用坊主」を怒らせてしまうかもしれません。控えたほうがよさそうです。

☆参考文献
『春夏秋冬 土用で暮らす。』冨田貴史・植松良枝:著/主婦と生活社
『民間信仰事典』桜井徳太郎:編/東京堂出版