あなたは仲間といっしょに音楽のバンドを組んでいます。メンバーは5人。ボーカルとギターとドラムとベースとキーボードです。あなたはキーボード担当。路上ライブや小さなライブハウスを巡ったりして、毎日、頑張っています。
みんなの目標は、いつかメジャーデビューすること。
んなある日、ついにメジャーデビューの話が飛び込んできました。ようやく夢がかなったと、みんなで大喜びしていたのですが、デビューにあたっては、次の4つの条件がありました。
1)バンド名を変えること
2)ファッションを今とは変えること
3)音楽性を変えること
4)ベースをもっと腕のいい者に替えること
この条件を飲まなければ、メジャーデビューの話もなくなります。ベース以外の4人が集まって、相談をしました。

ボーカルはこう言いました。
「条件は気に入らないけど、とにかくまずメジャーデビューしなければ何も始まらないよ。そのために頑張ってきたんだから。デビューして有名になれば、また自分たちの好きなようにできるようになるだろうし」
ギターはこう言いました。
「メジャーデビューはしたいけど、音楽性を変えてまでデビューしても意味がないよ。
自分たちの音楽をやれないんじゃ、なんのためのデビューだか。他の条件はともかく、これは飲めない」
ドラムはこう言いました。
「この仲間でやっていくのが楽しいから、頑張ってきたんだ。そりゃ、メジャーデビューはしたいけど、ベースを切ってまではイヤだ。あいつだって、このバンドが生きがいなんだ。他の条件はともかく、これは飲めない」

3人はあなたに「おまえはどの意見に賛成なんだ?」と迫ってきました。
あなたは、3人のどの意見に賛成しますか?
心が決まったら解説を読んでください。



このテストから学ぶテーマ
「幸福な生きかたの選択」

今回は「幸福な生きかたの選択」について考えてみたいと思います。
人生にはさまざまな岐路があります。右に進むべきか、左に進むべきか、迷うことも少なくありません。どちらにもプラスがあり、どちらにもマイナスがある。こちらも捨てがたいし、あちらも捨てがたい。そんなとき、ひとつの指針となる「自分の心理傾向」について、お話ししてみたいと思います。
「ある人たちにとっては幸福なことが、他の人たちにとっては不幸なのだ」(ラディゲ)
人生の岐路で、ある人にとっては右の道に進むほうが、別の人にとっては左の道を進むほうが幸せになれるのです。幸福は一つではありません。
では、いくつあるのでしょうか?

それは「3つ」です。
心理学のある見方からすると、ですが。
心理学者のマクレランドによると、人間が社会活動に参加する動機には大きく3つあります。【パワー動機】と【達成動機】と【親和動機】です。
簡単に言うと、
【パワー動機】は「勝ち組になりたい」
【達成動機】は「夢をかなえたい」
【親和動機】は「人と心のつながりを持ちたい」
という心理です。この3つの動機のいずれが強いかによって、その人にとっての幸福はちがってきます。

【パワー動機】タイプの人は、勝ち組になれさえすれば幸福です。今回のお話だと、ボーカルの人です。メジャーデビューをいちばん重視します。
【達成動機】タイプの人は、たとえ勝ち組になれても、それが本当に自分の目指していたことでなければ本当の満足はありません。今回のお話だと、ギターの人です。自分のやりたい音楽がやれないのでは、メジャーデビューしても意味がありません。
そして、【親和動機】タイプの人は、たとえお金があっても社会的に成功しても、周囲の人たちと温かい心のつながりがなければ、本当の幸福を感じることはできません。
今回のお話だと、ドラムの人です。仲間を切ってまで成功したくありません。みんなと仲良くやっていくことがいちばんなのです。

これはどのタイプが良くて、どのタイプが良くない、ということではありません。それぞれが自分にふさわしい幸福を目指すことが大切なのです。世間の風潮などに流されて、自分にふさわしくない道を進むと、たとえ成功しても、幸福は得られません。
また、タイプの異なる人の生き方を責めることもよくありません。
たとえば、【パワー動機】が強くて外で働くことが生きがいの女性を、【親和動機】が強くて家族を大切にしている主婦が、「家族を放っておいて働きに出るなんて」と非難するのはよくありません。
逆に、【親和動機】が強くて家族を大切にしている主婦を、【パワー動機】が強くて外で働くことが生きがいの女性が、「家にばかりいて社会参加していない」などと非難することも、大きな間違いです。それぞれの生き方をお互いに尊重していくことが大切です。
時代によって、もてはやされる生き方はちがってきます。生き方にも流行があるのです。
自分の心理傾向とそれにズレがある場合には、つい生き迷ってしまいがちです。
また、人は自分とは異なる生き方を、つい非難してしまいがちです。

そういうことが起きないよう、「幸福には3つの道がある」ということを知って、さらに自分の心理傾向も知って、人生の岐路に立ったとき、いちばん自分にふさわしい道を選んでいただければと思います。そうすれば、いちばん後悔がなくて、いちばん幸福になれるはずです。
なお、恋愛の相性を考える上でも、この3タイプは重要です。それについては、選択肢ごとの解説のところで。
<賢者の答え>

ボーカル「まずメジャーデビューすることが大切」
→この意見をもっともだと思ったあなたは……
あなたは【パワー動機】タイプだということです。
あなたにとっての本当の幸福は「勝ち組になること」にあります。
社会で成功し、社会的地位を得て、財力も得る。それがあなたを幸福にしてくれます。
もし人生の岐路で、「こちらの仕事のほうが儲かるが、自分がやりたいことではない」「こうすれば出世できるが、仲間を押しのけることになる」というような、
「お金をとるか、夢をとるか、友情や愛情をとるか」の選択を迫られたときには、迷わず「お金、地位、名声、勝利、成功など」を選択するべきです。
「お金には不自由しないけど、誰にも愛されていない」「セレブになれたけど、結婚生活は苦痛」というような嫌な展開もあるかもしれません。しかし、夢や人を選択してしまえば、あとでもっと激しく後悔することになります。
つねに「お金、地位、名声、勝利、成功など」を最優先することこそが、このタイプの人が幸福になれる生きかたです。
ただし、そういう生き方は、モラルのレベルが低くなってしまいがちです。成功や勝利のためには手段を選ばず、人の恨みを買ってしまったり。勝利するとは、人を負かすことではありますが、あまりひどいことはしないよう、一定の歯止めは必要です。
モラルレベルを落としすぎると、勝利の幸福にも次第に影がさすようになってしまいます。
また、このタイプはとくに家庭不和になりやすいこともわかっているので、その注意と覚悟も必要です。同じタイプの人とつきあうべきです。とくに結婚のときはそれが重要。
たとえば【達成動機】タイプの人が相手だと、たとえ成功しても「そんな成功ではダメ」と否定される場合があります。
また【親和動機】タイプの人だと、「成功よりも、家庭を大切にしてほしい」と言われて、思うように働けなくなります。

ギター「自分たちの音楽をやれないんじゃ、メジャーデビューしても意味がない」
→この意見をもっともだと思ったあなたは……
あなたは【達成動機】タイプだということです。
あなたにとっての本当の幸福は「夢をかなえること」「人生の目標を達成すること」にあります。
たとえどんなに財産をたくわえることができても、社会的地位を得ることができても、幸せな家庭を築くことができても、自分の目指したことをしていなければ本当の満足はありません。
たとえば、画家を目指していたのに、実業家で成功しても、どこかでむなしさを感じてしまいます。逆に、画家になっていれば、たとえ収入はわずかでも、本当の幸福を味わえるのです。
もしこのタイプの人が今、満たされない思いを抱いているとしたら、今からでも本当にやりたいことを目指すべきです。もし到達できなくても、目指す過程にこそ本当の喜びがあります。
そして、もし人生の岐路で、「自分の夢を優先すれば、恋人とうまくいかない」「夢をあきらめて、お金持ちと結婚したほうがいいのか」というような「お金をとるか、夢をとるか、友情や愛情をとるか」の選択を迫られたときには、迷わず「夢」を選択するべきです。
「夢をあきらめなかったせいで、最愛の人に去って行かれた」というような悲しい出来事も起きるかもしれません。しかし、夢をあきらめた場合の後悔と比べれば、ずっとましなのです。常に「夢」をいちばん大切にすることこそが、このタイプの人が幸福になれる生きかたです。
ただし、この生きかたは、モラルレベルが低くなってしまうことがあります。夢をかなえるためなら、人を裏切ったり、どんなことでもしたり。あまり行き過ぎのないよう、一定の歯止めをかける必要があります。キレイ事だけでは夢はなかなかかなわないかもしれませんが、汚すぎることも、せっかくかなえた夢の輝きを曇らせます。
恋愛面では、同じ【達成動機】タイプの人とつきあうべきです。
【パワー動機】タイプの相手だと、あなたの夢や目標へのこだわりを理解してくれず、「夢より現実だよ」と言われかねません。
【親和動機】タイプの人だと、「いつまでも夢を追いかけずに、家族を大切にして」と言われてしまいます。
ただ、同じ【達成動機】タイプでも、それぞれに自分の夢を追いかけてしまったのではうまくいきませんから、あなたの夢をサポートすることを目標としてくれる人を選ぶことが必要です。

ドラム「みんなが仲良くなることに意味がある。仲間を切ってまでメジャーデビューしたくない」
→この意見をもっともだと思ったあなたは……
あなたは【親和動機】タイプだということです。
あなたにとっての本当の幸福は「周囲の人たちと温かい心のつながりを築く」ことにあります。家族に愛され、仲間と楽しくつきあい、一生の友がいる、それこそが無上の幸福です。
心が温かければ、収入が低くても、社会的地位が低くても、本当の不幸やむなしさを感じることはありません。
もし人生の岐路で、「人のために自分の夢を犠牲にすべきか」「嫌いなお金持ちと結婚するか、好きだけど貧乏な人と結婚するか」というような「お金をとるか、夢をとるか、友情や愛情をとるか」の選択を迫られたときには、迷わず「人」を選択するべきです。
その結果、「人の気持ちを傷つけずにすんだけど、大損をしてしまった」「好きな人と結婚できたけど、お金がなくて辛い」というような苦労や悲しみは当然あるでしょう。
しかし、夢や金を選択してしまえば、あとでもっと深刻な後悔をすることになります。
受験より恋愛、仕事より家族、成績より仲間を優先しましょう。つねに「人」を最も大切にすることこそが、このタイプの人が幸福になれる生きかたです。
人を傷つけてまで自分の夢をかなえようとせず得をしようとせず、たとえ自分が損をしてでも夢をあきらめてでも人を助けてあげましょう。一人勝ちすることではなく、みんなで幸福になることが、このタイプの人の幸福なのです。
なお、「社会参加しなければダメ」とか「勝ち組にならなければダメ」とか「夢を持たなければダメ」とか、周囲はいろんなことを言うかもしれません。でも、【親和動機】タイプの場合には、社会参加とか勝ち組かと夢とか、そんなものは重要ではありません。家族があればいいのです。勝ち負けなんてありません。夢なんて、なくていいのです。別のタイプの人たちの言動に惑わされないようにしましょう。
なお、恋愛は、同じタイプの人とするのがいちばん幸福になれます。お互いに家族を大切にし、心のつながりを大切にする、温かい家庭を築けます。
【パワー動機】タイプの人や、【達成動機】タイプの人を、支えてあげるという生き方もあるでしょう。ただし、その場合は、相手が仕事や夢ばかりを追いかけているさびしさに耐えたり、一方的に支えるだけの立場になってしまうことへの覚悟が必要です。


いかがでしたか? 皆さんは何によって幸せを感じるタイプだったでしょうか。他人と生きかたを比較しても、何が幸せでどう生きるかということは、人によって違うのだということを改めて感じました。
津田先生「4月はいやおうなく生き方について考えさせられるときですが、9月は自分から生き方について考える時期ではないかと思います。秋は物思いにふけるのにふさわしい季節ですから。その一助となれば幸いです」

もしも皆さんが人生の岐路で迷う時、ぜひ参考にしてみてくださいね。