これは、第二次世界大戦中のドイツ軍捕虜収容所で、実際にあった出来事です。
フランス兵士の捕虜たち(全員男性)は、長い収容所生活で気力が尽きかけていました。しかしこれではいけないと、ある兵士がこんな提案をしました。
「この部屋の隅の空ベッドに、自分の理想の女性がいると想像してみようじゃないか」
好きな女性の前だと思えば、落ち込んでばかりもいられませんし、生きる意欲もわきます。 着替えのときには女性に失礼のないように毛布で隠したり、本当にその女性がいるかのようにみんなでふるまいました。
そうすると、みんなだんだん、その女性が実在するように感じてきたのです。男たちに、元気が戻ってきました。
その様子を不審に思ったドイツ軍の司令官は、こっそり調べて、空想の女性のことをつきとめました。そして、その【空想の女性の引き渡し】を命じました。フランス兵士たちの気力をくじくためです。

フランス兵士のAは言いました。
「彼女を渡してはいけない! 何としても守ろう!」

一方、別のフランス兵士Bは言いました。
「渡さなければヒドイ目にあわされる。彼女は空想だが、刑罰は現実だ。渡してしまおう!」

あなたがフランス兵士だったとしたら、どちらの意見に賛成しますか?

心が決まったら解説を読んでください。



このテストから学ぶテーマ
「空想することの大切さ」

人間には【空想】する力があります。 現実にはありえないことを、頭の中で思い描くことができます。現実にはいない人を、頭の中で作り出すことができます。

【空想】はしばしばネガティブな批判のされ方をします。
「夢ばかり見ていてはダメだ。ちゃんと現実を見なければ」とか「空想の世界に閉じこもっていないで、外の世界に出ていかないと」とか。現実逃避の道具と見なされてしまうのです。

昔の言葉にも「世の中は、詩を作るより、田を作れ」というのがあります。たしかに、食べるものがなければ生きていけません。
でも、「人はパンのみにて生くるにあらず」もまた真実です。
厳しい現実を生き抜くには、現実をよりよいものに変えていくには、詩が必要です。今とはちがう世界を【空想】できるから、世の中を変えていけるのです。目の前にないものを【空想】できるから、新しいものを生み出せるのです。

そして、この収容所の事例のように、【空想】は人の心を支えてくれます。たとえ目の前の現実は苦しくても、【空想】によって生きる力を得ることができるのです。

結局、このフランス兵たちは、女性を渡しませんでした。

最後まで守り抜いたのです。その罰として、独房に入れられた者もいました。独房に長く監禁されると、そのほとんどは正気を失ってしまいます。でも彼は、独房の中でも、広々とした草原や動物たちを【空想】することで、最後まで正気を保つことができたのです。

こういう事例を知れば、「空想なんてくだらない。そんなヒマがあったら経済新聞でも読む」なんて言える人はいないでしょう。 【空想】はたんなる非現実ではなく、現実を生きるための力なのです。人間の持つ最もすばらしい能力の一つなのです。
植民地の虐(しいた)げられた人たちを対象とした心理調査で、「あなたがもしお姫様だったら?」と質問して、人々が【空想】できるようなら、その人たちは独立できる力を残しているけれども、「わたしがお姫様なんてありえない」と【空想】できなくなっていたら、もはや社会を変えて行く力を失っているそうです。
【空想】できる心をぜひ大切にしていってください。

<賢者の答え>

フランス兵士A「彼女を渡してはいけない! なんとしても守ろう!」
→この意見に賛同したあなたは…

空想を守るために、現実の罰さえ怖れないあなたの姿勢は、どんな状況でも生き抜いて、新しい人生を切り開いていける力につながります。 ただ、日常的には、人から批判されることもあるかもしれません。「もっと現実的にならなきゃ」などと。
たしかに、空想の世界にばかりにひたっていると、現実に対応できなくなることも。 大切なのはバランスです。現実だけでは味気なく、夢だけでは不安定です。夢を見るときにも現実も忘れずに、現実を見るときにも夢を忘れずに。


フランス兵士B「渡さなければヒドイ目にあわされる。彼女は空想だが、刑罰は現実だ。渡してしまおう!」
→この意見に賛同したあなたは…

空想を守るために、現実に罰を受けるというのは、たしかに馬鹿げて感じられるでしょう。あなたのように考えるのが当然です。
でも、たとえ空想でも、女性を渡してしまえば、心理的には、現実の女性を渡すのと変わりません。みんなはガッカリして、自分の情けなさを責めることになるでしょう。
生き抜く力を失わないためには、空想が大切なのです。
現実的になるばかりが賢明なわけではなく、ときには空想を守ることが、心を強くし、人生を豊かにし、未来の可能性を広げてくれます。

今回のテストの件で津田先生とお打ち合わせをしていた時、戦争で捕虜になった人について次のようなこともお話してくださいました。
津田先生「年をとっていても身体が弱くても、希望を持ち続けた人が生き延びました。反対に、若くても体力があっても、希望を失った人から倒れていったそうです」と。
それほどまでに、希望を抱くこと、夢を見ること、想像してワクワクすること…つまり【空想】するということは、生命力に直結しているんですね。
子供の頃の夢や、これからこんなことをやってみたいな…という希望、今もちゃんと持っていますか?
忙しい中ではつい忘れがちな【空想】すること。あなたの生命をもっとイキイキさせるためにも、自由な空想のスペースへ、ときどき遊びにいきましょう!