モテ声というと、鈴が鳴るような声、透き通った聞こえのいい声、と思ってしまいますよね。確かにキレイな声もすばらしい。けれど、ただ声質がキレイなだけが、果たして本当にモテるのでしょうか。
そんな時、《表現よみ》の山口葉子さんに出会いました。朗読の中でも、声質にこだわらず、「声」だけで文学作品に隠れた感情や思想を表現することに特化した《表現よみ》は、聴き手の心をぐっとつかんで、作品の世界を感じさせることができるもの、と私ミユは実際肌で感じて、そう思いました。
そうして私は、ここにモテ声のひみつが隠されているんのではないかと思い、山口さんに、その《表現よみ》の役割や発声方法を伺うことにしたのです! この声の表現力から、モテ声のひみつを探ってみましょう☆

1 モテ声=キレイな声とは限らない!

山口さん「私達の《表現よみ》では、“文学作品”の中の活字に隠れた感情を『声』で表現しているので、決してキレイな声を出す訓練をしているというわけではないのです。ですから、まず誤解しないで頂きたいのが、必ずしも、魅力的な声=キレイな声、とは限らない、ということです。
『声』というものには用途があります。例えば、
・アナウンサーの読むニュース
・デパートのインフォメーション
・ファーストフード店の店員のマニュアルトーク
などは、すべて“情報”であり、それに求められてるのは、“正確さ”ですよね。この情報を聞き取りやすくするために適した声というのが、キレイでハキハキしている声なのです。ですから私達が本当に魅力的だと思う声は、まったく別のものだと思っています 」
声には用途と言いましたが、たしかにアナウンサーは悲しいニュースを悲しそうに読んだりすれば情報が乱れてしまいますものね。あえて無感情で読むのも、“情報”を伝えやすくするためだったんですね♪ では、本当のモテ声というのは、一体どういう声なのでしょう?

2 ≪表現よみ≫から声の表現力を知る!

山口さん「私達の、文学作品を朗読することを≪表現よみ≫といいます。この≪表現よみ≫を通して、聞き手であるお客様に、『声』だけでその作品の世界に誘い、より深く楽しんでもらいたいと思っています。けれど私達は、キレイな声で読もうとも、大きな声で読もうともしているわけではありません。それでもなぜ感動して頂けるかというと、作品に込められた感情(内面)を、的確に声にのせているからなんです。声の表現力は本当に多様で奥深く、魅力的な世界だと思っています」

ということはつまり、感情を声にのせる、ということは、悲しい感情を悲しそうに言ったりする、ということなのでしょうか?

★感情を声にのせるということ 

山口さん「これは、悲しい感情を悲しく言ったり、恋する気持ちを甘く言ったり、と単純なことではありません。その感情(内面)を正確に表現している声ということなんです。≪表現よみ≫の文学作品で例えてみますと、
・登場人物のセリフなら
→その登場人物の行動、置かれている状況を読み取って、一番適した感情をのせる
・セリフ以外の地の文章なら
→語り手の感情や論理や、作者の世界観を読み取って、一番適した感情をのせる
ということなんです」

なるほど! ってことはつまり、同じ「ごめんね」でも、そのセリフを言う人が、
・素直な人なら
→「申し訳ないなぁ」という感情をのせて素直に謝る「ごめんね」
・素直になれない反抗期なら
→「私悪くないもん!」なんて感情をのせて、ぶっきらぼうに言う「ごめんね」
という風に、その人の感情によって態度が変わってしまうのと、同じことでしょうか?

山口さん「そうですね、似ていますね。ただどちらの例の場合でも、決して声色を変えたり、何かアクションをつけたり、表情をつけたりしているわけではないんです。そうですね、例えばちょっと発声法を変えてみるんです。
私達の表現よみでは【沈み込みの発声】という1つの手段があるのですが、いろいろな表現の方法の中でこれを使うことによってかなり、作品の中に隠された感情や理念を、声にのせて表現することができるのです」

すばらしい! 演じるのではなくて、自分のもつ地声の中から、どの声を使うか、ということなんですね。≪表現よみ≫にはたくさんの表現方法がある、ということですが、
私ミユが思うに、どうやらモテ声のカギは、この【沈み込みの発声】にありそうです!
「正確に声にのせる」、そののせ方も知りたいところですが、それはちょっと後でお話するとして、たくさんあるプロの発声方法の中から、誰にでもできるコツを、詳しくお聞きしてきました☆

3 胸に届くような温かい声を出すレッスン

山口さん「まず、作り声をするのではなく、自分の地声を活かしましょう。この【沈み込みの発声】という方法を使えば、強い思いを届けるのにとても有効なんです」

では、まずこの方法で、「思いを強く届ける」声の出し方をレッスンしてみましょう!

★【沈み込みの発声】 

ポイント1
お腹でベルトを押すように、ぐっと腹圧を入れて、声に強さを出す。
ポイント2
お腹に声を集めるように、身体ごと沈ませる。

山口さん「相手に届けたい、伝えたいと思っている言葉ほど、外へ外へと放つのではなく、自分の身体の中心(お腹のあたり)に引き戻すように、沈み込んだ声を出してください。」

どうです、できましたか? 私ミユは個人的に、届けたい言葉こそ引き戻す、というのに驚きました! 伝えたい、という思いが強いほど、相手を圧倒するように外へと声を出すというわけじゃないんですね。

山口さん「また、魅力的な声といったら、こんな声はどうでしょう? 強い思いを届ける声に温かさをプラスすると、相手の心にぐっと届くような温かい声を出すことができるんです。先ほどの【沈み込みの発声】にプラスして、両手に息を、はぁ~っと吐くイメージで温かさを出す動作を加えて、レッスンしてみてください」

え~っと、先ほどのポイント1&2を使いながら、はぁ~と息を吐くようにと。なるほど、コツがつかめてきましたよ! この温かい声は、なんだか温かいお湯につかったような、じんわりと包まれたような気持ちになりますね。つまりまとめるとこういうことでしょうか。
この方法を使うと、
・思いの強さが伝わりやすくなる
・信憑性(しんぴょうせい)を感じさせることができる
・言葉の重みを増すことができる
→この発声法を使えば、好きな人に思いを伝えたい時、面接で自分を信用できる人間だと思われたい時など、つまり、自分に対して興味をもって欲しい時に効果的だと思います!
また逆にこの方法を使わず、背筋をピンと伸ばして、腹圧を入れずに声を出すと、
・内容がうすい印象を与える
・他人事のような印象を与える
→ただ、あえて好意をもっていないことをわかって欲しい時、自分とは関係なくて素知らぬ振りをしたい時など、つまり、自分に興味をもってほしくない時に関してはこちらの声のほうが効果的、かもしれませんね♪

山口さん「この2つの方法を使って、ぜひ『好き』という言葉で言い比べてみてください。きっと聞こえ方が違うのを実感できると思いますよ」

確かに、この【沈み込みの発声】に温かさをプラスして言ってくれた山口さんの「好き」。特別に色っぽく言ったわけでもないのに、女の私でさえ、ドキッとしてしまうような声でした★ また、こんな方法もあるそうです。

★自分との距離感を縮める音の調整

普段何気なく使っている、「私」「あなた」「彼(彼女)」という言葉ですが、注意して聞いてみると、
「私」(一人称)→「あなた」(二人称)→「彼」(三人称)
という順に、少しずつ音が高くなっている、というではないですか! ではでは、「私」「あなた」「彼」とみなさんも声に出して言ってみましょう! さぁ、ご一緒に! せーのっ!

「私」「あなた」「彼」、「私」「あなた」「彼」、「私」「あなた」「彼」、

ね? 違いますよねっ☆ この音の高さの違いは何かと言ったら、自分との距離なんだそうです。「私」は一番、近い存在、目の前にいる「あなた」は次に近く、三人称である「彼」は一番遠い、というわけです。その通りですよね!

「私」(一人称)→「あなた」(二人称)→「彼(彼女)」(三人称)
  低い          →     高い
近い          →      遠い
《表現よみ》では、この高さを調整する手法をよくとるんだそうです。それでは、この高さを調節してみたら、どうなるのでしょう?

山口さん「例えば、友達にある男性の話をする時、『彼ね』と話すとします。この言葉に高めの音をのせた時、全くの赤の他人の話、という印象を受けます。けれどこれに低めの音をのせてみると、赤の他人の彼が、急にその人にとって特別な『彼』なんだという印象を受けませんか? つまり低めの音は、自分との距離を縮める印象を与えるのです。大切な人の名前ほど、ゆっくり重みを効かせて言ってみてください」

高めで軽く速く、「彼ね↑」   
ふむふむ、なんだか通りすがりの人を指差して言ってる感じです。

低めで重くゆっくり、 「彼ね↓」   
ホントだ! こちらは自分のカレシの話をしているみたい!

また、「あなた」の場合でも、「あなた↓」とゆっくり重みを効かせれば、ぐっと自分のほうに引き寄せることができそうですね☆ 会話の中でふと、重みを効かせて彼のことを呼んでみるのはどうでしょう? またまた、ドキッとさせられるかもしれませんね♪ ただこの発声法。使う状況を間違えれば、誤解を生んでしまう危険もあります。
ということで、先ほど後回しにしました、「感情(内面)を正確に声にのせる」そののせ方と一緒に、状況に合う声の使い方をご紹介したいと思います!

4 身体に覚えさせ、いつでもいい声を出す!

山口さん「感情(内面)を声にのせる時、大切なのが、イメージ力です。私達の【表現よみ】は作者の意図を正確に読み取り、『この感情に相応しい声はどんな声だろう』と想像する訓練をしています。
ですからこの想像する力があれば、日常生活の中でも、その時々のシチュエーションに合わせて、感情を声にのせることができるので、いつでも魅力的な声が出せるのだと思います。
ただ、私達も訓練して得た力なので、それを使いこなすのは少し難しいと思うんです。だからこそ今の世の中、自分の気持ちを伝えるのが難しくなってきているんですよね。とくに面接や、大事な人と向き合う場面なんかで、緊張して全然伝えられなかったり、困った思いをする人も多いのではないでしょうか」

確かに普段できていることでも、緊張してしまうと、棒読みになったり、カタコトになってしまったり・・・。どんなに可愛い告白の仕方を練習しても、どんなに面接で自己アピールの文章を考えても、緊張していたら、自分の魅力を発揮できなくなってしまいますよね。この場合どうすれば良いのでしょう?

山口さん「そうですね。伝えられなくなってしまうのは、緊張して身体がコチコチになり、発声器官としての自分の声が、有効に働かないからなんですよね。だからと言ってイメージ力をすぐにつけろ、と言ってもすぐには難しいこと。逆に考えてみれば、身体の使い方がわかっていたとしたら、緊張していても、もっとゆったりとした表現ができるのではないでしょうか。 先ほどの発声方法を身体に覚えさせておくんです。そうやって、いろいろなシチューエション(状況)を想定して声に出してみてください」

なるほど、身体が覚えていれば、緊張していも自然に声は出せますよね! ということで、同じセリフを様々な状況に当てはめて、言い分けて訓練してみましょう♪

★状況に合う声の出し方を身体に覚えさせる訓練

↓次のメニューとその後のセリフを、次の3つのシチュエーションに分けて読み上げてみてください。もちろん、大切な言葉はさきほどの2つの発声方法を使ってくださいね。

★MENU★
・3種のチーズ盛り合わせ
・あつあつえびグラタン
・ジューシーイタリアンハンバーグ
・地中海シーフードカレー
・トマトとバジルのパスタ
・シェフの気まぐれピッツァ

セリフ → 「あなたはどれにする?」  

シチュエーション1
お腹が空いて、食べたくて食べたくてしょうがない時、
相手にも早く選ぶように催促している場合
シチュエーション2
何とも思っていない男性との食事。しょうがないからつき合っている。
相手が選ぶものに興味はないけれど、社交辞令として聞いている場合。
シチュエーション3
大好きな彼と素敵なレストランで、楽しい食事。どのメニューも魅力的で、彼が何を選ぶのか、すごく興味津々で聞いている場合。

いかがですか? 恥ずかしがっていては、身につきませんよ(笑)♪ それぞれの声を出す時、どんな風に身体を使っているか覚えさせてください。そうすれば緊張している時など、思った通りに声がでないような時でも、誤解されずに、思い通りの声を出すことができるはずですよ。間違ってもシチュエーション3の時に、2の使い方はしちゃダメですよ!
私ミユも、こっそり家でやってみましたが、どうしても表情や動作でごまかそうとしてしまうのです(笑) 改めて、私の前で、声のみで言い分けてくださった山口さんの表現力に感嘆するばかり! でも、諦めずに訓練してみようと思います! ん? しかもこの訓練、それぞれのシチュエーションを想像するわけだから、イメージ力のUPにもつながるではないですか! すばらしいっ★ 本当にためになるお話、ありがとうございました!

山口さん「例えば、自分に悲しくて悲しくてしょうがないようなことがあった時、友達から『大丈夫?』『元気出して!』とたくさんの言葉を並べるだけのなぐさめ方より、その人の中にある最高級の温かい声を使って『一緒に帰ろう?』と言われたほうが、感動しませんか? なぜ感動するかって、相手の心根が声に乗って、自分の肌を貫いて届くからですよね。だから、そんな声が出せることが、本当に人を惹きつける声、本当に美しい声なんじゃないかな、と私は思うんです。
『声』を少し変えるだけで、全体の印象が変わりますよね。≪表現よみ≫で、ある一節の最後のたった一文の音に温かさを加えただけでも、作品がパッと色づいたりするんです。ですから、『声』というのは本当に変幻自在で、何かを届けることができる媒体なんですよね。
ぜひ機会があれば、私達『表現よみオーの会』の≪表現よみ≫を聞いてみてください。私もまだまだ勉強中なのですが、声がいかに変幻自在な媒体か、直接聞けば、実感して頂けると思いますよ」

以前、あるテレビ番組で、こんな実験をやっていました。それは、ジュウシマツのメス鳥は、どのようにしてオス鳥を選ぶのか、というもの。この実験から、ジュウシマツのメス鳥は、1パターンのキレイな声で鳴くオス鳥より、いくつものパターンを組み合わせた声で鳴くオス鳥に惹かれる、ということがわかったのです。複雑な声の出し方ができることというのは、リスクを負うこと。それがつまり強さの象徴になっているということで、そのオス鳥はモテたんだとか。
キレイな鳴き声を出そうとするのではなく、鳴き声の幅を広げてメス鳥のハートを得ることができたオス鳥。私達人間も、訓練して声の幅を広げていけば、うわべだけではない、本来の魅力を表現することができ、それを見つけて、引き寄せられてくる人が現れるんじゃないか、なんてことを思いました。
ですから、キレイな声にとらわれないで自分自身の地声をどう魅力的にみせるかを考えていきましょうね。キレイな声より、複雑なモテ声を目指そう!


素材協力/音楽画像素材ウタノツバサ
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素材協力/イラスト素材集【イラストわんパグ】無料イラスト
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