「初めて彼と出会ったのは、知り合いに誘われて行ったバーベキューでした。その会というのが、ミュージシャンをしていた彼が主催する集まりだったんです。その会は、目立つ子とかかわいい人も多かったし、私は彼の眼中にさえ入っていない状態でした。自己紹介の順番なんか抜かされちゃったくらい存在感がなかったみたい(笑)。私は積極的にしゃべれるわけでもないし、がんがん自分を売りこめるわけでもなくて…。だから、とりあえず自分ができるコトといったら後片付けくらいしかなかったので、それはしっかりやりましたね。別に、『彼に見てもらおう』と思ってやったわけじゃないけれど、つき合ってから後、彼に『他の子が遊んでいる中、きちんと後片付けをしている姿が印象的だった』って言われました」

後片付けや掃除を率先してやっている人って、男女限らず好印象に映りますよね。しかしそれだけで好意をもたれる、とはいきません。そのバーベキュー後、彼とどのように関わっていったんですか?
「あれから、少しずつ彼が気になっていました。心の奥では『連絡先交換してほしい』とか『今度ふたりで会いたい』とか言いたかったのですが、彼はステージの上の人だから簡単には誘えないわけです。だって、ここで自分の気持ちのままグイグイいってしまったら、ただの『あぶないファン』になってしまいますよね? だから、まずはライブやストリートライブに毎週、足を運ぼうと思って。それで、ただ行くだけではなくて、ライブの感想をメールで送ったりはしていたかな。客観的に見てここがよかったです、ということを書いて送って。もちろん、ダメ出しとか悪いこととかは書かないです(笑)。つき合ってからならするけれど、この段階では、ね? なんと言っても、この時点では好意をもってもらうが最優先事項ですから。自分のイイところをホメられて、悪い気がする人なんていません!」

感想メールを送るのにも全勝女子の流儀がありました。まずは、ライブを見たあとに即書くということ。内容は彼を男性として評価するものではなくミュージシャンとして評価する内容に徹したそう。「私はとても安全なファンでございます」ということをわかってもらうためにも、ラブモード全開の他のファンと自分を区別してもらうにも有効的だったとAさんは言います。

「顔見知りになってからは努力の甲斐あって、ちょこちょこ話す機会も増えていきました。私としてはすごく話しかけたいのだけど、まったく話のネタがなくて…。頭の中は“何話そう何話そう”でいっぱいに(笑)。そこで考えたのは『彼の好きなものを試してみる』ということだったんですね。そうすれば共通の話題ができる。それにはまず、彼の趣味に興味をもとう!と。

でも、彼の趣味ってバイクだったんですよね…正直、私はバイクなんてまったく興味がなかったし、自動車の運転免許さえ持っていませんでした。でも、バイクに乗れたら今より彼に近づけるじゃないですか。そこでやめちゃうと、彼との接点は少ないままですよね。だから共通点はひとつでも多い方がいいと思って二輪の免許を取ってバイクも買いました! 私はモーレツな運動音痴ですから、教習所では何回もコケたし、教官にはイヤほどしかられました…。でも必死だったんです。それほど『彼と共通する何か』が欲しかった。これがあったから共通の話題もできたし、バイクでツーリングに行くことで、共通の思い出を作ることができました。これは、彼と親密になるためのとても大きな要因だったと思います」

こうしてMさんが参加するバイクの会に、Aさんは参加していくことになります。好きな人もいるけど彼の友達も大勢いる……という状況で、Aさんはどんな行動をとったのでしょう?
「彼と仲良くしているだけだと他の人とギクシャクしてしまうので、彼の友達とも仲良くしないとって思いました。彼が好きでつき合っている友達なわけだから、彼のそばでモジモジしていちゃダメだなって。他の女の子はみんなライバル!って思うのも良くないですね。その場の雰囲気を大切にしていくと、それはひとつの楽しい思い出になるじゃないですか。楽しいひとときは、ふたりの大切な思い出になります。共通の思い出が多いほど会話もできるし、親近感がわきますよね。彼の友達とも仲良くして、その場を楽しいものにしよう、という姿勢もまた、彼と接近できる大きな要素だったのだと思います」

ふたりの場合、はじまりが“ファンとミュージシャン”という関係だったということもあり、そこからふたりきりで会うまでには1年以上の月日がかかりました。ただし、その間に彼の中でAさんの印象はどんどん変わっていったとか。彼は自分のところまで一生懸命のぼってこようとしたAさんに対して、健気(けなげ)という印象を抱くようになっていきます。

「恋人への『あと一歩』を進めるのに大切なのは、相手を観察することです。何を望んでいるのか、何が楽しいのか、近くで観察していると相手の嗜好(しこう)が段々わかってきます。肝心なのは、自分が何をしてあげたいかというよりも、相手が望んでいるモノは何か、だと思うんですよ。彼が『話していて楽しいな』『一緒にいて楽しいな』って思えることってなんだろう?って考えるんです。自分はホラ、ドキドキして胸が苦しくはなるけれど、大好きな彼と一緒にいるだけで、それはもう、最高に楽しい時を過ごさせてもらっているワケですから。そうして両方が気持ちいい状態になると、自然とうまくいくんですよね。私はそういう状況にもっていけたから告白されたんだと思います」

話を聞いて驚いたのは、Aさんの口から「カケヒキ」というキーワードが一切出てこなかったこと。Aさんのやり方は、相手を不安にさせたり、心を揺さぶって自分を意識させるものではなく、相手に合わせて自分を変えていく、というやり方でした。小手先のテクニックではなく、真正面からぶつかっていったAさん。相手が望んでいるモノを与えて見極めることができたからこそ、こうして告白を受けることになったのでしょう。
それからふたりはどうなったかというと……、5年の交際期間を経てご結婚されました! 出会って9年ほど経った現在、今はどんな感じかとたずねると「彼のことをずっと好きだし、彼から愛されている感もありますよ」とのことでした。さすがに片想いの時のように毎日にチカラが入るわけではないそうですが、仕事も家事も遊びも、トコトン頑張るAさんを愛さずにはいられないだろうなぁ、そんなふうに感じました。