春を呼ぶ神の依代

シンボルは「一陽来復」。
古代から春を呼ぶ神の依代として、愛されてきた日本の花です。
2020年の東京五輪パラリンピックのマスコット、耳に見える触角(しょっかく)は桜の花びらの形になっているって、知っていました? サクラは豊穣や幸せをもたらす花ですから、アスリートたちを力強く応援してくれそうですよね。

花を見て、誰かを思い出す、そんな経験はありませんか?
今日、ご紹介するのはサクラの花にたとえられるほど美しい女性です。
サクラが象徴するミューズ、衣通姫(そとおりひめ)。
『日本書紀』や『古事記』に登場する伝説上のお姫様です。

『日本書紀』巻13にこんな話が載っています。

第19代允恭(いんぎょう)天皇が衣通姫に会いに行く途中、サクラの木のそばを通りかかりました。その花の美しさに衣通姫への恋心がつのり、歌を詠みました。

「花妙(ぐわ)し 桜の愛(め)で如此(こと)愛でば 早くは愛でず 我が愛づる子ら」

現代語に訳せば、
「サクラの花のように美しいあなた、もっと早くに愛すればよかったなあ、わが恋しい人よ」

衣通姫は允恭天皇の皇后の妹君とされています。
天皇は「皇后を迎える前に出会えたらよかったな。そうしたら、衣通姫をお嫁さんにしたのに」と言っているわけです。
皇后の立場からすれば、ずいぶん勝手な言いようですが、衣通姫はそれほど愛らしい、素敵な女性だったのでしょう。
サクラの花を見て、自分を思い出してくれるなんて、幸せです。
恋の場面に限らず、人の心に残る人間でありたいですね。

誰にでも、心に抱く1本のサクラがあると思います。
そして、これからきっと会いたいサクラ。
身近なソメイヨシノはもちろん、山桜、大島桜、5月上旬まで咲く霞桜………。
3月から5月まで、少しずつ開花の時期が異なるサクラを追いかけてみるのも楽しそうです。

<3月に生まれた人へのメッセージ>
満開のサクラのように華やかで、自分の魅力や才能を最大限に発揮できる人です。
大事なのはゴールを達成したあとの過ごし方。
燃え尽きる前に次への夢の種を心に蒔きましょう。
やる気を失って、のんびり休んでいるとチャンスを逃します。
つぼみから開花、花散って、葉桜へと移り変わっていく、それぞれの姿が美しいように、力の入れ方を工夫しながら進んで、新たな夢の花を咲かせましょう。

●この花のミューズ(女神):衣通姫(そとおりひめ)
「記紀」に登場する伝説上の女性。絶世の美女で、第19代允恭天皇に寵愛されたと伝わる。
名前のとおり、その美しさが衣を通して光り輝くほどだったという。
和歌の名手で、和歌三神の1人。
和歌山市にある玉津島神社の御祭神、玉津島明神は衣通姫尊のこと。
『日本書紀』では允恭天皇の皇后の妹、『古事記』では娘とされている。


○杉原先生の著作
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』 説話社刊
定価:3,024円(税込)A5判・並製・284頁 ISBN:9784906828357
http://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=177
http://setsuwasha.com/


○杉原先生の携帯サイト(フィーチャーフォン)
ケルトの森 木精占術
http://celticforest.jp/


○杉原先生がラジオ出演!
月に1度、『花のシンボル事典』から季節の花を紹介しています。
毎月・第3火曜日の19時25分から。
番組名:エフエムふくやま・本の情報番組「ブック・アンソロジー」<もっと素敵にマイライフ>のコーナーにて。
※「エフエムふくやま」公式サイトのWEBラジオでお聴きになれます。
http://fm777.co.jp/pc/html/simulradio.html
※日本全国どこからでもWEBでお聴きになれます。
※YouTubeでもお聞きになれます。
https://www.youtube.com/watch?v=bcxMNSYZw54