「自分が好きなように生きる」こと

サルスベリは漢字で「百日紅」。夏の初めから秋までの約100日もの間、紅色の花を咲かせ続けることから名づけられました。
鮮やかなピンク、淡いピンクなど、樹冠いっぱいに花でふわふわになる様子にうっとり。青空に映えるピンクの花を見ると、しばし猛暑のつらさを忘れます。

シンボルは「雄弁」。フリル状の小さな花が枝先に群がって咲き、花同士が話しているように見えるためです。
実際、幹を触ると、花がふるふるとふるえるんですよ。
別名の「笑いの木」「くすぐりの木」などもおしゃべりを感じさせる名前です。
花びらがちりめんの布のようにちぢれていることから、英名は「crape myrtleクレープ・ミルトル」。花の特徴がダイレクトに名前に表れている花の1つです。

サルスベリが象徴するミューズは、北斎の娘、葛飾応為(かつしか・おうい)。晩年の北斎と暮らした、腕のいい浮世絵師。
一度は絵師のもとに嫁入りしたが、針仕事など女性らしい仕事はせず、夫の絵の下手さをバカにして離縁。北斎のもとに戻り、助手を務めました。

応為は画号、日頃はお栄さんと呼ばれたこの女性、漫画家・杉浦日向子(故人)の漫画『百日紅』で有名になりましたね。アニメ化もされました。
杉浦氏が応為を描くのになぜサルスベリと題したかは不明ですが、あっけらかんとした性格からでしょうか。暑い夏に平然と咲くサルスベリのような……。
男気があって、少々口が悪く、おしとやかさからはほど遠い、貧乏生活もいとわない。ただし、絵はめっぽううまく、北斎のそばで毎日毎日ただ絵を描き続ける人生を送った女性。

北斎は晩年、80歳を過ぎてなおつぶやいた言葉が有名ですが、そばで応為は聞いていたようです。
北斎の弟子、露木為一が自分の才能がないことを嘆いていると、彼女は
「おやじなんて、猫1匹すらまともに描けねえ、と涙流して嘆いてるんだ。何事も自分が及ばないとイヤになる時が上達する時なんだ」
となぐさめたと伝わります。

葛飾応為を知ると、「自分が好きなように生きる」ことが何より幸せな人生だと思えてきます。
人がなんと言おうと関係ない。自分がいちばん楽で、心地よくて、好きなことをして毎日暮らす。
それから自分の才能を信じること。
絵や音楽など芸術でなくてもいい。料理でも掃除でもおしゃべりでも、自分が楽しくて得意なことを伸ばしていけば、人生はもっとよくなると教えてくれる江戸の女性です。

<8月に生まれた人へのメッセージ>
真夏に咲くサルスベリのように、あなたも青空が似合う明るい女性。細かいことにはこだわらず、自分が最も大切にしたいことに集中します。人を見る目があり、相手の本心を見抜く力に優れています。そのため辛辣なひと言で人間関係を台なしにすることもあるので注意しましょう。我が道を歩きながら、笑いを忘れなければ万事うまくいきます。

●この花のミューズ(女神):葛飾応為(生没年不詳)
葛飾北斎(1760-1849)の三女。江戸時代後期の浮世絵師。応為(おうい)は画号、名は栄(えい)。一度結婚したが離縁された後は北斎と暮らし、助手を務めた。絵の才能を父親から受け継ぎ、とくに美人画は北斎に「お栄にはかなわない」と言わせたほどの腕前だったという。枕絵、春画の作者としても活躍。北斎没後8年目の1857年、家を出て以来、行方不明。その時、67歳だったとされる。一方で慶応年間(1865~1868年。江戸時代最後の元号)まで生きたという説もある。

○杉原先生の著作
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』 説話社刊
定価:3,024円(税込)A5判・並製・284頁 ISBN:9784906828357
http://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=177
http://setsuwasha.com/bookDetail.php?bKey=177


○杉原先生の携帯サイト(フィーチャーフォン)
ケルトの森 木精占術
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ユリ 2018年7月
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