繊細な姿の内に秘められた情熱

風にゆれる姿が美しいヒナゲシ。
薄い花びらの繊細さとは対照的な、赤い花。内には情熱的な魂を秘めているかのよう………。
野原一面に咲くヒナゲシを見ると圧倒されます。
同じ仲間のケシ(Papaver semniferum)は実からアヘンのとれる毒草。麻薬性、催眠性をもつことから、妖艶な魅力をもった花の代表です。

ヒナゲシを象徴するミューズは、中国絶世の美女、虞美人(ぐびじん)です。戦国の世に楚の武将、項羽(こうう)を支えた女性です。
項羽が、宿命のライバル劉邦(りゅうほう)の軍に追いつめられ、別れの宴をひらいたとき、虞美人を思って歌った歌が残されています。

力は山を抜き 気は世を蓋(おお)う
時は利あらず すいは逝かず
虞よ 虞よ 汝をいかんせん
(山を貫くほどの力と、世界を覆い尽くすほどの気力をもっていた。
時はもはや私に味方をしない。すい(項羽の愛馬)は進もうとしない。
愛する虞美人よ、あなたをどうしてやればいいのだろう?)

四面楚歌となる中、項羽の歌に耳を傾ける虞美人。
宴のあと、項羽に殺されたとも、自決したとも伝えられています。
虞美人が流した血から真っ赤な花が咲き、いつしか「虞美人草」と呼ばれるようになりました。

虞美人のエピソードが私たちに残したものは、一途に人を愛する心でしょう。味方がわずか数人になっても項羽を信じ、忠誠を尽くしました。
戦乱の世、女性といえども、どちらが得かを見極めて、勝者のほうへ寝返ることもできたはずです。彼女はそうはせず、項羽とともに死ぬことを選びました。
一度信じた人を裏切るようなことはしない、愛した人の苦しみに寄りそう、潔さ。
赤い花びらには深い愛と、芯の強さが刻まれているようです。

<7月に生まれた人へのメッセージ>
あなたは繊細でありながら、心の奥には情熱的な魂を秘めています。風にゆれる花びらのように、心はゆれやすいですが、最終的には自分でしっかりと決断できる人です。目上の助言には注意が必要。強い口調で諭されると他人の思惑にのせられ、損することも。周囲がどんなに反対しようと、あなたの思いを貫いてください。

●この花のミューズ(女神):虞美人(紀元前3世紀頃)
楚の武将、項羽(BC232-BC201)の愛妾で、絶世の美女。虞姫(ぐき)とも呼ばれる。項羽が劉邦(漢の武将)との最後の戦いを前に、別れの宴にそばに座らせた。敗北があきらかとなり、項羽に殺されたとも自決したともいわれる。虞美人が流した血から、あるいは、墓から真っ赤な花が咲いた。花はいつしか「虞美人草」と呼ばれるようになり、中国の歴史に彼女の名が残ることとなった。

○杉原先生の著作
『神話と伝説にみる 花のシンボル事典』 説話社刊
定価:3,024円(税込)A5判・並製・284頁 ISBN:9784906828357
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